ドキュメンタリーでありながら最もフィクショナル。ならばアンワルの最後の嘔吐はどのように解釈すべきなのか。やはり彼にも良心の呵責はあったと観客は安心できるのか。そうではない。彼が多くの人を拷問して殺害したビルの屋上に上がるシーンは、切り返しのカットが重ねられていた。つまりテイクが(少なくとも)2回以上ある。
ならば嘔吐はフィクションなのか。でもなぜそれをあえて提示したのか。このとき加害者たちの軋みは、作品の軋みに転化する。アンワルの嘔吐は悔恨なのか。身体的な拒絶反応なのか。あるいはオッペンハイマーの演出なのか。
明確な回答はない。それは観客に委ねられる。
『アクト・オブ・キリング』
(2012年)
監督/ジョシュア・オッペンハイマー
出演/アンワル・コンゴ、ヘルマン・コト
<本誌2026年6月16日号掲載>
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