<印象の薄かった俳優への評価がこの作品で一変。ラストの解放感も音楽もとても印象的だ>
それまでスティーブ・マックイーンという俳優を良いと思ったことは一度もなかったはずだ。上手いとか下手とかのレベルではなく、印象がとても薄いのだ。
『荒野の七人』や『大脱走』では主要キャストの1人だったし、主役を演じた『ブリット』と『ゲッタウェイ』も、やっぱり印象は薄い。『栄光のル・マン』は観ていない。タフガイを体現するハリウッドのアクションスターの1人。僕にとってマックイーンはその程度の位置付けだった。
何よりも表情が乏しい。大笑いや大泣きしている顔は想像できない。怒っているときも笑っているときも照れているときも、基本的に表情はいつも同じ。
だから『パピヨン』を名画座で観たときは、これほどに演技派だったのかと驚いた。タフな刑事やガンマンではなく自由を奪われた囚人。派手なアクションシーンはほとんどない。だからこそ観る側は、その乏しい表情の内面を想像したくなる。
しかも150分の映画で(当時としてはかなり長い)、終盤にはしっかりと年老いている。特殊メークはもちろんだが、マックイーンも相当に減量したらしい。
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