アメリカは降伏文書をワシントンに持ち帰った後、一般公開して勝利宣言し、9月2日を「VJデー」(対日戦勝利の日)と定めて祝日にした。1995年、ビル・クリントン大統領が戦後の日本との友好関係を考慮し、「VJデー」の名称を改めて「太平洋戦争終結日」とし、連邦政府の祝日から除外した。だが、2通の降伏文書はそのまま残った。

もしアメリカが手にした降伏文書に書き損じがあったら、果たしてアメリカは訂正確認のイニシャルだけで済ませただろうか。

それにしても、厳粛な式典で酒に酔って書き間違えたとは、なんとあきれた不謹慎な振る舞いではないか。書き損じの「降伏文書」を受け取らざるを得なかったところに、敗戦国・日本の悲哀を見た思いがする。

2通の異なる「降伏文書」の存在は、第二次大戦の終結を宣言した歴史的な公文書に刻み込まれた、前代未聞の大失態の痕跡であったのである。

(筆者は東京生まれ、慶應義塾大学卒業。ニューヨーク在住。本籍は中国広東省。元慶應義塾大学訪問教授。著書に『中国共産党を作った13人』『日中百年の群像 革命いまだ成らず』『近代中国への旅』など多数)

<本誌2018年9月11日号[最新号]掲載>

【参考記事:元米兵捕虜が教えてくれた、謝罪と許しの意味】

ニューズウィーク日本版 進化する世界の鉄道
2026年10月20日号(10月14日発売)は「進化する世界の鉄道」特集。

鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます