バーナード・コーワンの最期の数秒間は、銃撃犯の1人が装着していたボディーカメラに記録されていた。
2023年10月7日の早朝、イスラム組織ハマスの武装集団が、パレスチナ自治区ガザから3キロ足らずのところにあるキブツ(イスラエルの農業共同体)の敷地内を移動していた。
イギリスとイスラエルの国籍を持ち、孫のいる祖父でもある57歳のコーワンは、自宅の避難部屋から外に出ていた。兄弟によると閉所恐怖症だったという。妻のマーガレットは中に残っていた。
武装した男が家の中で座っているコーワンを見つけ、ライフルを構えて窓越しに2発撃った。コーワンは倒れた。カメラはその後も、襲撃者たちが住宅や救急車のタイヤに発砲する様子を撮り続けた。別の家では台所のテーブルの上で電話が鳴り続けていた。
10月7日のハマスによる襲撃で殺害されたのは、コーワンを含む約1200人。恐ろしい悲劇的な数だ。
アメリカは今年の秋、9.11同時多発テロから25年を迎えた。事件では19人のハイジャック犯に2977人が殺害された。10月7日と同規模の攻撃がアメリカで起きれば、約4万人が犠牲になっていただろう。
この比較は、犠牲者の数だけでは語れない被害の大きさを浮き彫りにする。ハマスがイスラエルに与えた国家的なトラウマは深刻で、イスラエルが圧倒的な報復攻撃に出ることは政治的にも心理的にも予見できた。
10月7日の襲撃をめぐる議論の多くは、ハマスが何を達成しようとしたのかに焦点を当てる。人質の確保、収監者の解放、地域戦争の誘発、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の阻止などだ。