『南太平洋』 エミールとネリーは子供たちをめぐり葛藤する(49年初演)
②『南太平洋』 エミール(左)とネリーは子供たちをめぐり葛藤する(49年初演) EVERETT COLLECTION/AFLO

ミュージカルで描かれる人種差別には、作り手たちの切実な問題意識が反映されている。

一方で、それが物語上の「仕掛け」にとどまることも少なくない。49年初演の『南太平洋(South Pacific)』②や57年初演の『ウエスト・サイド物語(West Side Story)』③に現れるのは、アメリカ社会の割り切れなさだ。

『南太平洋』は、第2次大戦下の南太平洋の島を舞台に、フランス出身の農園主エミールと米海軍の従軍看護師ネリー、そして海兵隊のケーブルと島の娘リアットという2組のカップルのロマンスを描く。

彼らは互いに引かれ合うが、ネリーはポリネシア人の前妻との間に子供がいるエミールをなかなか受け入れられず、ケーブルもリアットとの結婚に踏み切れない。

葛藤するケーブルは楽曲「念入りに教え込まれた(You've Got to Be Carefully Taught)」で、差別は生得的でなく社会から教え込まれるものだと歌う。制作時には削除の圧力を受けながらも、この曲が残された事実は、作り手の問題意識の強さを示している。

"You've Got To Be Carefully Taught" - SOUTH PACIFIC (1958)

とはいえ、同作の結末には世間への妥協も見られる。2組のカップルが迎える結末には、当時の異人種間婚姻への忌避がにじむ。差別への批判と妥協が同時に存在する点にこそ、『南太平洋』の複雑さがある。

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