「マイクロソフトやグーグルのような巨大テックの影響力は、限られた規制と相まって、社会的に悪影響を及ぼす可能性のあるガバナンスのギャップを生み出している」とオルソン氏は主張する。労働市場でAIの影響は顕在化し始めている。

新卒者の労働市場への影響が大きく現れている。金融や法律などさまざまな分野の企業が、これまで若手社員が担当していたデータ処理やカスタマーサービスなどの業務を自動化している。AIを利用するツールが人間の労働力を置き換えるパラダイム・シフトが徐々に広がっている。

個人的な交流までもAIに依存する

オルソン氏は「生成AIの普及が、プライバシーと人間の主体性に重大なリスクをもたらす。コミュニケーションや意思決定、さらには個人的な交流までもAIに依存する。私たちの批判的思考能力が低下する恐れがある」と警鐘を鳴らす。

コンパニオンボットや音声対応アシスタントのようなツールがAIへの依存を助長する可能性がある。巨大テックは自社のインフラ以外で活動することがほぼ不可能なエコシステムを築き上げる。この排他的な独占空間を規制する必要があるとオルソン氏は訴える。

しかしシリコンバレーの大企業はしばしば「中国脅威論」を持ち出し、厳しい規制は西側の技術競争力を阻害し、中国に敗れる恐れがあるとほのめかす。このようなレトリックは政治家の恐怖心を煽り、巨大テックが実質的な規制を回避することを可能にしているという。

オルソン氏は「効果的なAI規制の欠如は、政府が急速な技術進歩に対応できていないことに起因する。消費者をAIの試験場のモルモットとして放置している。企業の自主規制は、技術革新が利益至上主義に基づいているという現実を考えると不十分だ」と危惧する。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます