最新記事

解き放たれた? 核軍拡競争の悪夢

Nuclear Negligence

2026年2月12日(木)11時00分
フレッド・カプラン (スレート誌コラムニスト)
アメリカとロシアが保有する核弾頭で全世界の8割以上を占めるとされる PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY PAUL CAMPBELLーGETTY IMAGES PLUS, ADOBE STOCK, AND ANDREW HARNIKーGETTY IMAGESーSLATE

アメリカとロシアが保有する核弾頭で全世界の8割以上を占めるとされる PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY PAUL CAMPBELLーGETTY IMAGES PLUS, ADOBE STOCK, AND ANDREW HARNIKーGETTY IMAGESーSLATE

<プーチンすら限定的な継続を提案した新STARTの失効をトランプが許したことで、世界はさらに危険な場所になる>


▼目次
プーチンの提案を無視
中国という新たな脅威

アメリカとロシアの間で唯一残っていた核軍縮合意である新戦略兵器削減条約(新START)が、2月5日に期限切れを迎えた。

ドナルド・トランプ米大統領は1月、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、「期限切れになるなら、それまでだ。われわれはもっといい合意を結べる」と語った。もしかするとトランプは、中国を加えた新たな核軍縮合意を考えているのかもしれない。

だが、いったん失効すれば、新たな条約を交渉してまとめるには少なくとも1年かかるだろう。史上初めて軍縮条約に中国を加えるとなれば、1年どころでは済まないかもしれない。その間に、核競争が再燃する可能性は十分ある。

だが、驚愕すべきことに、トランプと側近たちは、その可能性や、それがアメリカの政策や世界の安全に与える影響について会話すらしたことがないようだ。

自称「取引をまとめる達人」のトランプは、1期目にイラン核合意から離脱したとき、アメリカにとって「もっといい」合意をイランにのませると豪語したものだ。だがそんな条約は生まれなかった。新STARTについても、「もっといい合意」がすぐに出てくるとは考えにくい。

新STARTは、1991年にジョージ・H・W・ブッシュ米大統領がソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領と調印した第1次戦略兵器削減条約(START1)と、ソ連崩壊後の93年にロシアのボリス・エリツィン大統領と調印した第2次戦略兵器削減条約(START2)の後継条約で、2010年にバラク・オバマ米大統領とドミトリー・メドベージェフ露大統領が調印した(発効は11年2月)。

新STARTでは、戦略核弾頭の備蓄を1550発に削減することが合意された。START1で約束された数(6000発)をさらに約75%減らすというのだ。また、双方の遵守を図るため、両国政府による相互査察を実施することも定められた。有効期間は10年で、最大5年の延長が可能とされていた。

トランプが1期目の任期を終えて、ジョー・バイデン大統領が誕生した21年1月、新STARTは10年間の期限切れ間近にあった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米、バングラデシュでの中国の存

ビジネス

午前のドルは152円前半に下落、1月安値下抜けが焦

ワールド

米エネ長官が約30年ぶりベネズエラ訪問、投資拡大推

ビジネス

鹿島、純利益予想を上方修正 建築施工順調で市場予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中