日本女性が握る「絶妙な固さ」 ソウルのOLが殺到する日本式おにぎり専門店が大ヒット

1日400個もの売上がある日本式おにぎり専門店「とんありおにぎり」のおにぎり(筆者撮影)
<おにぎり文化が根付いていない韓国で、日本式おにぎり専門店が異例のヒット>
韓国で今、日本式おにぎりが静かな人気を集めている。2025年2月、ソウル在住の日本人女性が日本式おにぎり専門店「とんありおにぎり」を開業。ほぼ同時期に韓国セブンイレブンも日本人監修のおにぎりを発売した。両者に接点はなく、追随でもない。期せずしてタイミングが重なったのだ。
日本では1日200個から300個が繁盛店の目安とされるおにぎり専門店。しかし「とんありおにぎり」は、おにぎり文化が根付いていない韓国で1日400個も売り上げている。店名には日本語の「おにぎり」を付け、メニューと味は日本式、スタッフもすべて日本女性という徹底ぶりだ。
成功の立役者──松本ひとみさんの挑戦
オーナーの松本ひとみさんは、日本人駐在員の間でよく知られている居酒屋「とんあり」の経営者だ。2002年に大阪の会社を退職し、1年間の語学留学を経て学生街でお好み焼き主体の居酒屋を開業。その後、都心に移ると日本人駐在員が集まるようになった。数度の移転を経て、2020年には住居を兼ねた自社ビルを建てるなど、韓国で成功した日本人の一人に数えられている。
現在、ソウルに自社ビルを有する日本企業は東レのみで、個人では松本さんがただひとりだという。
おにぎり店開業のきっかけ
ところが新型コロナの終焉と前後して食材費が高騰。日本の味を手軽に味わってほしい思いとは裏腹に、値上げをせざるを得なくなった。手軽で安価に食べられる韓国式海苔巻き「キンパブ」が、コロナ禍前の2000ウォン台から今や4000ウォンを超えるほどの物価高騰。とりわけ食費の高騰が著しい。
そんな中、大阪に一時帰国した松本さんの目に、コンビニおにぎりを頬張る韓国人旅行者の姿が飛び込んだ。関西空港でもおにぎりを頬張る韓国人旅行者を目にした松本さんは、「おにぎりなら物価高騰に悩む韓国の会社員たちの助けになる」と考えた。