最新記事
イスラエル

対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃か、重要人物暗殺か、ハイテクで恥をかかせるか

3 Ways Israel Could Respond to Iran

2024年4月16日(火)18時39分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

もしイスラエルの首脳が、イランとの間で緊張がエスカレートすることを懸念するなら、比較的穏健な対応を選ぶかもしれない。それは、イランの支援を受けている中東の代理勢力を攻撃するか、あるいはイランにサイバー攻撃を仕掛けるなどの手段だ。その場合の狙いは、こうした攻撃を通じて、イスラエルがこの地域の有力者であると誇示することだ。

14日未明の攻撃では、イスラエル領内に実際に着弾したイランのドローンやミサイルはほとんどなかった。イランはこれで既に面目を失い、国際的威信にも傷がついた可能性はある。

 

「連中は大恥をかいた。イスラエルはより一層強くなり、イランは弱くなった」とマッケンジーは語った。「何かしなくてはいけないとしたら、私なら、イランに対する自分たちの技術的な優位性をさらに強調するようなことをする。相手にますます恥をかかせればそれでいい」

レバノンを拠点とするイスラム武装勢力ヒズボラは、この地域でイランと最も緊密で最も重要な親イラン組織だ。イスラエルは、既にこの6カ月間にわたって、ヒズボラに攻撃を行っているが、今後ヒズボラにはるかに強力な軍事作戦の実施に踏み切る可能性もある。

この選択肢も、イスラエルにとってそれなりのリスクをはらんでいる。2023年10月7日に発生した、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム主義勢力ハマスのイスラエルに対する大規模侵攻以降、ヒズボラは、イスラエルとの本格的な戦争に引き込まれるのを避けようとしているように見える。

しかし米ブルッキングズ研究所のダニエル・バイマンは、2023年11月のフォーリン・ポリシー誌への寄稿で以下のように指摘している。「万が一、ヒズボラが全面戦争もやむなしとの結論に至れば、これは大々的なエスカレーションになる。ヒズボラは、10万発以上のロケット弾を擁しており、これはハマスの軍備をはるかに上回る規模だ。また、ヒズボラの戦闘員はよく訓練されており、百戦錬磨だ」。全面戦争になれば、ヒズボラに大きな損害が出ることは間違いないが、イスラエルにも軽傷ではすまないかもしれない。

それでも、イランが自国領土から直接イスラエルを攻撃するという、歴史的な一歩を踏み出したことを受けて、ネタニヤフは、自らが率いる戦時内閣内の強硬派からかなりの圧力にさらされている。

「その選択肢を選んだものの、結果的にそれでは不十分だった場合に、弱腰と受け止められるおそれがある」と、CNAS所属の専門家、ロードは指摘した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米民主重鎮ペロシ氏が政界引退へ、女性初の下院議長

ワールド

中国商務省報道官、EUとの貿易・投資協定交渉に前向

ワールド

米ユナイテッドとデルタ、7日の便の欠航開始 各20

ワールド

グリア米通商代表、スイスや中米諸国などと関税協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中