最新記事
アメリカ政治

トランプら共和党の大統領選候補がメキシコ麻薬組織への軍事攻撃提案 米国への報復招く可能性も

2023年9月26日(火)12時05分
ロイター
メキシコ地方政府庁舎の前に転がる銃撃戦の薬きょう

トランプ前米大統領を含む共和党の2024年大統領選候補が麻薬組織(カルテル)との戦いとして、メキシコへの軍隊派遣やミサイル攻撃を提案している。写真はメキシコ・コアウイラ州で2019年12月、銃撃戦が起きた数日後、地方政府庁舎の前に残された薬きょう(2023年 ロイター/Daniel Becerril)

トランプ前米大統領を含む共和党の2024年大統領選候補が麻薬組織(カルテル)との戦いとして、メキシコへの軍隊派遣やミサイル攻撃を提案している。ただ、米軍・政府の現・旧関係者は、違法薬物流入を食い止められないだけでなく、米国内で流血の報復を招く可能性があるとの見方を示している。

トランプ氏のほか、フロリダ州のデサンティス知事、ヘイリー元国連大使は選挙に勝利した場合、麻薬鎮痛剤「オピオイド」の一種「フェンタニル」の米国への流入を食い止めるためメキシコでの軍事力行使を承認する可能性があると述べている。

米税関・国境警備局(CBP)のデータによると、南部国境におけるフェンタニルの押収量は近年爆発的に増加しており、2014年にはわずか10.7キロだったものが、22年には約8400キロに拡大。米疾病対策センター(CDC)によると、22年には約8万人の米国人がオピオイド関連の過剰摂取で死亡し、その主な原因はフェンタニルだ。

しかし、米国にとって最大の貿易相手国に軍隊を派遣することは失敗する危険性があるという。カルテルが米国内で報復する可能性があるほか、米軍人やメキシコの民間人がカルテルメンバーとの銃撃戦で死亡する可能性がある。メキシコは米国の法執行機関との協力を断ち切るとみられ、フェンタニル製造所を突き止めるのも困難だ。

メキシコに詳しい米軍将校は匿名を条件に「特殊部隊を派遣する。カルテルのリーダーを始末する。さて、今度は誰がトップになるのか。これはカルテルを分裂させ、ますます暴力的なグループを生み、封じ込めるのが難しくなる」と語った。

元駐メキシコ大使でシンクタンク「ウッドロウ・ウィルソン国際センター」のフェロー、アール・アンソニー・ウェイン氏は、フェンタニルの製造所を見つけるのは難しいが、「間違ったアパートメントを襲い、隣の罪のない子どもや一家を殺すということは起こりやすい」と述べた。

元国務省職員でテロ対策と麻薬対策に携わっていたジェイソン・ブレイザキス氏は、カルテルが米特殊部隊の襲撃を受ければ、報復として彼らの工作員が米国内の民間人を攻撃する可能性があると話す。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ首都に夜通しドローン攻撃、23人負傷 鉄

ビジネス

GPIF、前年度運用収益は1.7兆円 5年連続のプ

ワールド

「最終提案」巡るハマスの決断、24時間以内に トラ

ビジネス

トランプ氏、10─12カ国に関税率通知開始と表明 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中