最新記事
中央アジア

G7の間に中央アジアに地歩を築く中国

China Winning New Central Asia Foothold, Edging U.S. Out of Russian Bastion

2023年5月18日(木)19時54分
トム・オコナー

初の中央アジアサミットの開会前、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領(左)と握手する中国の習近平国家主席(5月18日、陜西省上海市) Mark Cristino/REUTERS

<中国は今日から中央アジア5カ国の首脳を招いて初の中央アジアサミットを開催する。アメリカとの覇権争いの一環だ>

ジョー・バイデン米大統領はG7広島サミットに出席するため5月18日、来日したが、そのタイミングを狙ったかのように中国は、中央アジア5カ国の首脳をシルクロードの起点だった都市・西安に招き、初めての中央アジアサミットを開催した。中央アジアの国々は旧ソ連の構成国で、長年ロシアの影響下にあったが、中国はこのサミットを契機に、この地域との経済、政治、安全保障上の協力関係を一段と強化する構えだ。

【マップ】中央アジア──中国とロシアに挟まれた旧ソ連諸国

18日から2日間にわたって開かれる中央アジアサミットで、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は中央アジア5カ国、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの大統領と会談する。米中が世界的な覇権争いを繰り広げるなかで、アメリカがG7なら、中国は中央アジアを支配下に置くという習の意図を内外に知らしめる動きだ。

折しも中央アジア5カ国の首脳たちは前週にロシアの首都モスクワを訪れ、第2次世界大戦中に旧ソ連軍がナチス・ドイツに勝利したことを祝う戦勝記念日の式典に参加したばかり。5カ国はいずれもロシアのウクライナ侵攻を公然と非難することを避けてきたが、この「地域的な不決断」に対し、中央アジアサミットでは、中国とロシアに向けて「地域的な団結と合意」を示すことになると、米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のグローバル・チャイナ・ハブの非常勤研究員ニバ・ヤウはみる。

新疆支配の正当化をねらう

「中央アジアの国々は、自分たちの地域の命運はロシアと中国の手に握られているという事実を受け入れる決断をしたのだろう」、中国にとっては、「今はまさにチャンスだ」と、ヤウは言う。「この地域に乗り出して、経済、安全保障、社会その他さまざまな分野での影響力を強めようとしている」

中国にはまた、中央アジアを味方につければ、隣接する新疆ウイグル自治区への支配を正当化し、分離独立の動きを抑え込めるとの読みがあり、それが中央アジアへの関与を深める「中国の最大のねらい」だと、ヤウは言う。新疆ウイグル自治区は、中国が中央アジアからエネルギーや原材料を輸入する際の玄関口にもなっている。

新疆ウイグル自治区は8カ国と国境を接するが、うち3カ国は中央アジアの国々だ。新疆は人権問題をめぐる米中対立の焦点ともなっていて、米政府は、イスラム教徒が多数を占めるウイグル人を大量に逮捕して収容所に送り込む中国政府の弾圧を「ジェノサイド(集団虐殺)」と非難している。中国はこれを強く否定。新疆で治安当局が行なっているのは「テロとの戦い」であり、隣国アフガニスタンから米軍が撤退したせいで、ウイグル人過激派のテロが活発化する恐れがあるため、対策を強化せざるを得ないと主張している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、外貨建ハイブリッド債で約4300億

ワールド

米、対中報復措置を検討 米製ソフト使用製品の輸出制

ビジネス

テスラ、四半期利益が予想に届かず 株価4%下落

ビジネス

米シティのフレイザーCEO、取締役会議長を兼務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    やっぱり王様になりたい!ホワイトハウスの一部を破…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中