最新記事

アメリカ政治

トランプから「弾劾された大統領」の汚点は消えない、永遠に

Impeachment Is a Permanent Stain

2019年12月23日(月)16時50分
リリ・ルーフボロー

12月18日に下院で行われた採決でトランプは不名誉の列に名を連ねることに JONATHAN ERNST-REUTERS

<米史上3人目、ついに弾劾訴追されたトランプ大統領。1月に行われる弾劾裁判で有罪になる可能性は少ないが、決して無駄ではない。そして現在の共和党は血迷っている>

アメリカではこれまで、弾劾訴追され、かつ、有罪・罷免に追い込まれた大統領はいない。この国の歴史を通して、そんな前例はない。いまだかつて、ただの一度もだ。

こんなふうにしつこく繰り返すのは、ドナルド・トランプ大統領が弾劾されても「大したことはない」というムードにうんざりしているからだ。

民主党が過半数を占める下院は、トランプのウクライナ疑惑をめぐる「権力乱用」と「議会妨害」の2つの弾劾条項の採決準備を進めていた。だが大統領に報いを受けさせようと躍起になっている人々にすら、どこかさめた空気が漂っていた。

下院は12月18日の本会議で弾劾条項を承認。トランプは弾劾訴追された。これを受けて1月に上院で弾劾裁判が行われるが、共和党が過半数を占める上院で罷免に必要な3分の2以上の賛成を取り付ける可能性は確かに低い。とはいえ、アメリカの歴史においては、大統領が弾劾され、しかも有罪になることのほうが、前例のない事態なのだ。

弾劾されても有罪にならなければ全ての努力が水の泡、と考えるのはおかしい。弱気になるのも分かるが、これでは、実際には成功したためしのないことをやろうとしているという諦めムードを広げることになる。有罪になるかどうかが報いを受けるかどうかの基準だとしたら、報いを受けた大統領はいまだかつて1人もいないことになる。そんな考え方はナンセンスだ。

トランプが弾劾訴追されたのは現実だ。弾劾自体が彼に対する報いであり、その痛手は途方もなく大きい。弾劾された大統領という汚点は永遠にトランプに付きまとうことになるはずだ。

民主党は何事も敗北のように言いがちだが、トランプの弾劾訴追は画期的な出来事だ。2018年の中間選挙で有権者が表明した願いが尊重され、責任逃れをする大統領に法の裁きが下されようとしている。たまには来るべき勝利を受け入れてもいいのだ。

弾劾条項が歴史的なものだと認められたからといって、弾劾で何もかも解決できるということにはならない。一方で、これから行われる上院での弾劾裁判の茶番を批判しないでいいわけでもない。

裁判は簡略化の可能性も

弾劾裁判で「陪審役」を務める共和党のリンゼー・グラム上院議員やミッチ・マコネル上院院内総務らは、公正な裁判をする気がないことを明言している。こうした態度は非難できるし、非難すべきだ。

彼らは採決で罷免に反対票を投じ、実際に証人を呼んで証言させるプロセスを省いて大統領を守るつもりでいる。そんなことを口にしてはばからないこと自体、現在の共和党が血迷っている証拠にほかならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、低価格EVで利益率低下も 7─9月期決算

ワールド

トランプ氏、ハマスに警告 合意違反継続なら「残忍な

ビジネス

米ワーナー、完全売却の可能性検討 複数の企業が買収

ワールド

ガザ停戦計画は予想以上に順調、米副大統領 イスラエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中