最新記事

日本政治

マネーロンダリング対日審査、法整備不備を指摘の恐れ 国内政治家への規制なく

2018年10月4日(木)17時00分

第4次審査は各国が苦戦

FATFの第4次審査は、第3次審査より審査項目が多様化した。国内法の整備状況に加え、法制度が実際に機能しているかどうかについても審査される。一段と厳しくなったFATFの要求に応えられるように、金融庁は金融機関に対しても、マネロン防止体制を確立するように厳しく指導している真っ最中だ。

一方で、すでに第4次審査を受けた国々の結果は厳しい。主要国で「合格」したのはイタリア、スペイン、ポルトガルなど。米国やスイス、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど「金融先進国」とされる国でも「不合格」が相次いでいる。

PEPsの規制は、法令の遵守状況に関する40の審査項目の1つ。主要国で、この項目をクリアしたのは国内外とも規制を強化しているスペイン、豪州、イタリア、ポルトガル。米国は国内PEPsの規制が明確でないなどとしてパスできなかった。

専門家の1人は「このまま行けば、日本はPEPsの規制について落第するのは間違いない」と懸念する。

ただ、PEPs規制は審査項目の1つに過ぎず、ここで「不合格」になっても、全体の審査結果に直結するとは限らない。

「米国でさえできないのだから、『後進国』の日本ができるわけがない」と自嘲(じちょう)する金融関係者もいる。しかし、「審査の前から不備が分かっていながら、何もしないわけにはいかない。政府一丸で取り組んでいるのだから、警察庁には適切に対応してほしい」(経済官庁幹部)との声もある。

「外圧」待ち

「官僚が政治家に対する規制を提案できるわけがない」――。ある省庁の幹部は、国内PEPsの規制に踏み切れない背景を解説する。「グローバルな金融規制の動きなど国会議員が理解するわけもなく、国会が紛糾するのは必至」と話す。

ただ、金融界からは「民間も対応に努力している。官は官でやるべきことをやってほしい」(銀行役員)と、「官尊民卑」への不満も漏れる。

ある法曹関係者は「来年のFATF審査の前に、国内PEPsの規制強化に向けて政令改正に動き出すとは考えにくい」とみる。「官僚はFATFの指摘という『外圧』を待っているのだろう」と話した。

マネロン対策の取り組みは、図らずも「政官民」の関係の歪みを浮き彫りにしている。

(和田崇彦 編集:布施太郎)

[東京 1日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 2029年 火星の旅
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月20日号(5月13日発売)は「2029年 火星の旅」特集。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米マイクロソフト、3%人員削減へ AI以外でコスト

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、CPI伸び鈍化もインフレ見

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資確約 トランプ氏訪問

ワールド

トランプ氏、対シリア制裁解除へ 暫定大統領との面会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」にネット騒然
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 6
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    トランプは勝ったつもりでいるが...米ウ鉱物資源協定…
  • 9
    「奇妙すぎる」「何のため?」ミステリーサークルに…
  • 10
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中