最新記事

人権問題

まるで冷凍庫か犬小屋のような悪環境 トランプが不法移民親子を引き裂いた収容所

2018年7月25日(水)16時12分

完全な名前が分からず、多くがいまだ収容されていることから、ロイターは直接、陳述書を提出した移民に話を聞くことはできなかった。

ロイターは移民の陳述書に関してCBPにコメントを求めたが、CBPは司法省に問い合わせるよう返答した。同省はコメントを拒否。だがCBPは過去に、施設の環境を擁護している。

フローレスさんの裁判で先月提出された報告書の中で、CBPの年少者コーディネーターのヘンリー・モーク・ジュニア氏は、「施設にいる全ての年少者が威厳と尊厳、そしてその脆弱(ぜいじゃく)さから特別な配慮をもって必ず扱われるよう」多大な努力を司法省は行っていると語っている。

モーク氏がインタビューを行った親や子どもたちは「食事や軽食、飲料水を提供され、トイレや流し台に行くことができ、適温に維持されている部屋に収容されている」と語ったという。

だが同時に、CBPは賞味期限切れの食料は必ず処分し、保護データを必ず記録するべきだと同氏は指摘している。

冷凍庫と犬小屋

米国政府が不法入国した親子を引き離した最近の事例も含め、CBP施設の劣悪な環境を訴える声は長年、繰り返し表面化してきた。新たな陳述書は、その数の多さと内容の一貫性という点において異例である。

環境は適切だとする少数意見もあるものの、大半は、寒くて食事は少なすぎ、子どもと引き離され、十分な敷布団もない混み合った小部屋に入れられたと証言している。仮設トイレは汚れ、プライバシーもなく、また電気が昼夜を問わずついているという。

2006─2014年にCBPで国内問題を担当するアシスタントコミッショナーを務めたジェームズ・トムシェック氏はロイターに対し、施設は短期収容のためのものだと話す。

「一時的な収容施設に、想定より長期にわたり収容されていることは間違いない」

被収容者は一部の施設についてスペイン語で冷凍庫を意味する「イエレラ」と呼ぶ。非常に寒いからだ。また、屋内がフェンスで仕切られた広い空間は「ペレッラ(犬小屋)」と呼ばれている。

施設では、子どもたちは親とは異なる部屋に入れられることも多いことが陳述書から明らかになった。

カリフォルニア州チュラビスタの施設に収容されているレイディという名の女性は、幼い子どもたちが金属フェンス越しに親に触れようとしているのを見たと証言している。

「母親たちは子どもに手を伸ばし、子どもたちも必死で檻(おり)のフェンスから手を伸ばしていた」と彼女は言う。「でも当局者が子どもたちを引き戻し、母親たちをどなりつけた」

こうした収容場所は、CBPが書類手続きを行っているわずか数時間の間、成人を収容するために設けられており、そこに問題の原因があると、2013─14年に米移民税関捜査局(ICE)局長代理を務めたジョン・サンドウェグ氏は指摘する。

「率直に言って、子どもたちには向いていない」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

Reade Levinson and Kristina Cooke

[18日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、英国への大規模投資発表 AIなど

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中