最新記事

麻薬対策

フィリピン現職市長暗殺 強硬な麻薬対策の一方で自身にも疑惑が

2018年7月3日(火)12時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

朝の市庁舎でハリリ市長が暗殺された ABS-CBN News / YouTube

<麻薬対策で「超法規的殺人」という容赦ない取り締まりが行われるフィリピンで、現職市長が暗殺された。果たして市長は犠牲者なのか、それとも......>

フィリピン・ルソン島南部カルバラソン地方にあるバタンガス州タナウアン市で、7月2日朝、市庁舎前で行われていた国旗掲揚式に参列していたアントニオ・ハリリ市長が何者かに銃撃され、死亡する事件が発生した。

地元警察では約160メートル離れた藪からライフル銃で市長を狙った腕利きのスナイパー(狙撃手)による暗殺事件とみて特別捜査チームを編成して捜査を始めた。

ハリリ市長はドゥテルテ大統領が強力に進める麻薬対策に批判的ながらも協力し、麻薬犯罪容疑者を市中行進させるなどしてきたが、一方で市長自身の麻薬犯罪への関与も取りざたされ、脅迫を受けていたといわれる。暗殺の背景が政治的なものなのか、麻薬関連なのか国家警察も注目している。

7月2日午前8時10分ごろ、市庁舎前の広場に整列した市職員の先頭の列中央にサングラスをかけジーンズ、ブルーのジャケットを着て首からIDをぶら下げたハリリ市長が左右の市幹部と談笑していた。そのうち国歌斉唱が始まり、全員が直立不動で右手を左胸に当てる姿勢をとって斉唱しているその時、乾いた銃声が1発響き渡り、ハリリ市長は右側にいた女性のヨアナ・ビラモール副知事に寄りかかるように倒れた。

一瞬の出来事に参列者は何が起きたのかわからない様子だったが、一斉に職員が逃げ出し、警護官らしき男が銃を手に動き回る中、警護官らによるとみられる複数発の銃声が動画に残っている。その後、数人が横たわるハリリ市長に駆け寄り、駆けつけた車に抱えて病院に運んだ。

ヨアナ副市長は事件後地元ラジオ局に対して「ショックであり、悲しい出来事だ」と語っている。

一連の出来事は市長らの左前方でカメラを回していた市の記録員、さらに参列者の後方でスマートホンによる動画を撮影していた人の映像に記録され、その様子は動画投稿サイトにアップされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、ガザへ「強力な」攻撃指示 即座に空

ビジネス

米CB消費者信頼感、10月は6カ月ぶり低水準 雇用

ワールド

米テキサス州、鎮痛剤「タイレノール」製造2社提訴 

ワールド

米中首脳、フェンタニル規制条件に関税引き下げ協議へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 5
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 6
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 7
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中