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コンゴ・カビラ大統領とルワンダの利権 ----コンゴ中央部、国連とムクウェゲ医師の「忘れられた危機」

2017年9月11日(月)18時00分
米川正子(立教大学特定課題研究員、コンゴの性暴力と紛争を考える会)

「国連PKOは、腐敗し、かつ国民を食い物にしているコンゴ政府を支援している」("U.N. peacekeepers in the DRC are aiding a government that is 'corrupt and preys on its citizens")

「国連は、国民に対して略奪行為を行っている政府を支援している。それを終わらせるための品位と常識を持つべきだ」("the U.N. is aiding a government that is inflicting predatory behavior against its own people. We should have the decency and common sense to end this.")(注3)

MONUSCOは悪名高い存在だが、米国という大国の大使がMONUSCOを初めて明白に批判したことは注目に値すべきである。

ムクウェゲ医師の現状

最後に、性暴力の犠牲者を救う活動を続けている産婦人科医、ムクウェゲ医師の現状について触れたい。今年4月、ムクウェゲ医師の親友で婦人科医、かつ活動家であるギルド・ビャムング(Gildo Byamungu)医師が殺害された。ビャムング医師はムクウェゲ医師が暮らすコンゴ東部のブカブ市より南にあるウヴィラ市で危険を伴いながら活動を続けており、ムクウェゲ医師同様に、MONUSCOによる護衛が付いていた。それが突然なくなったため、ビャムング医師はムクウェゲ医師に相談に行き、ウヴィラの自宅に帰ったとたんに襲われた。その際にまだ生きていたので、家族は彼を隣国ブルンジの首都ブジュンブラの病院に運ぼうとしたが、国境の出入国管理事務所で出国を止められた。これはコンゴ政府が関与しているという意味であり、ムクウェゲ医師に対する脅迫でもあると思われる。

本事件の翌月、MONUSCOが、ムクウェゲ医師が働き、かつ住まいがあるパンジ病院での護衛の撤退を突然表明した。MONUSCOの予算不足というのが表向き理由だが、コンゴ政府からの圧力があった可能性が高い。上記のようにMONUSCOは悪評が高いが、それでもいないよりいる方がましな場合もある。キャンペーンサイト「change.org」上では同医師の保護のため署名を求める運動が世界を巡った。その効果とEU(欧州連合)からの厳しい非難もあって、MONUSCO撤退は撤回された。しかし、ムクウェゲ医師によると、このPKOによる保護がいつまで続くかわからず、不安定な状態にあることには変わりない。

――――――――
(注3)Reuters, "U.S. envoy says U.N. aiding 'corrupt' Congo government", March 29, 2017,

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