最新記事

米海軍

なぜ米海軍は衝突事故を繰り返すのか

2017年9月7日(木)20時00分
トム・カレンダー(米ヘリテージ財団シニアフェロー、軍事専門家)

以下は最も現実的な3つの理由だ。

1)艦船数と人員が削減され過ぎて、運用ニーズに追いつかなくなった

海軍が保有する艦船は、2001年の316隻から現在は277隻まで削減されたが、今も従来のまま約95~100隻の艦船を絶えず世界中に派遣している。結果的に海上任務は長期化し(半年~9カ月間、もしくはそれ以上)、メンテナンスは後回しになり、装備の不具合が増えた結果、運用可能な艦船にますます負担が集中している。

最終的に、運用とメンテナンスが優先され、訓練(と睡眠)にかける時間が削られる。現状、乗組員は十分な訓練を受けていないばかりか常に疲れ切っており、仕事の質が格段に落ちている。

操船より電子技術優先

また過去14年間で艦隊の訓練や人材育成を疎かにした結果、若い乗組員が操船や航行技術に関する集中的な訓練を十分受けられなくなった。

たとえ訓練の時間ができても、GPSや電子海図、レーダーなど新型の航法装置の使い方を学ぶことが優先される。

海軍では毎年兵士のおよそ3分の1が海上任務につく。その合間を縫って、衝突事故を回避するための見張りや操船を教えるのは一苦労だ。まして熟練の兵士に育てあげるのは至難の業と言える。

2)前方展開する艦隊の運用ニーズが極度に高まり、艦船や乗組員の運用能力を認証する時間もとれない

各艦船の任務は、任務の遂行能力ではなく、時間的な空きがあるかどうかで決まる。

第7艦隊の中でも潜水艦部隊は、適切な認証を取得していた。

3)国防予算削減のつけが回ってきた

──以上の点を踏まえ海軍と議会は、洋上艦の操船術と航行技術の習得を優先させるべきだ。乗組員が最も基本的な操船を習得できるよう、訓練に時間や予算を割かなければならない。早急に。

(翻訳:河原里香)

This article first appeared on the Daily Signal.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、新たなサイバー脅威を警告 84カ国のユー

ワールド

イスラエル内閣、26年度予算案承認 国防費は紛争前

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中