最新記事

小売業

アマゾン+スーパー、宅配改革への大勝負

2017年8月22日(火)18時10分
ダニエル・グロス(ビジネス・ジャーナリスト)

アマゾンの狙いはホールフーズ店舗のピックアップ拠点化? Rick Wilking-REUTERS

<ホールフーズ買収で実店舗網を拡大するアマゾンは、配送の「ラストワンマイル」問題に挑む>

コンビニエンスストア市場にも進出したネット小売り最大手の次の一手はこれだった。

米アマゾン・ドットコムは6月、高級自然食品チェーンのホールフーズ・マーケットを137億ドルで買収すると発表。市場規模7000億ドルを超えるアメリカの巨大な食品・飲料小売業界に本格的に参入する。

なぜホールフーズを買収したのか。食品チェーン大手が誇る数多くの実店舗と経験が手に入ることを考えれば、アマゾンにとっては安い買い物だ。

しかも、アマゾンの目的は富裕層向けの高級食品販売に手を広げることだけではないようだ。同社はコンビニエンスストアのほかに、実店舗の書店もアメリカ国内でオープンしている。

今回の買収で、この実店舗網に食料品店が加わった。となるとジェフ・ベゾスCEOの狙いは、ネット通販企業の頭痛のタネを解決することにあるのではないか。すなわち、配送の最終段階に当たる物流センターから個人宅への「ラストワンマイル」問題だ。

グローバル物流システムのおかげで、世界中で膨大な量の商品が行き交っている。コンテナを船舶で輸送し、トラックや列車に積み替え、各地の物流センターに運び込んで仕分けるプロセスはとても効率的だ。

【参考記事】アマゾン、ホールフーズ買収の狙いはデータ

顧客に手間を転嫁する

問題はそれから先、顧客の元へ届ける部分だ。国土が広いアメリカには一戸建てが多く、住宅間の距離もかなりある。筆者が暮らすコネティカット州の郊外住宅地には毎日、宅配トラックが何度もやって来るが、大抵は1度につき1つの荷物を1軒の家に届けている。ラストワンマイルは、多くの資源と労働力と時間を消費する最大の難関だ。

こうした問題の1つの解決策として、ドローン(無人機)に期待が寄せられている。アマゾンをはじめとするeコマース(電子商取引)企業がドローン配送サービスの試行に乗り出しているのはそのためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中