最新記事

北朝鮮情勢

米朝舌戦の結末に対して、中国がカードを握ってしまった

2017年8月14日(月)08時10分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

だからアメリカには北朝鮮問題に終止符を打つ義務がある。北朝鮮があまりに「ならず者国家」となっているため、その真相さえ見えなくなっているが、この事実を直視しない限り北朝鮮問題の着地点はない。

巻き込まれただけの日本こそ、トランプに忠告すべきだった。そうしなければ、北東アジア情勢に関しても、中国が主導権を握ってしまう。いま米朝を左右できるカードは、中国の手に渡ってしまった。もう、手遅れになったことは、米中首脳電話会談で明らかになりつつある。

習近平&トランプの電話会談

カードを握った上で、日本時間12日、習近平とトランプは電話会談を行なった。CCTVは大きく報じた。これはトランプが習近平にした電話で、CCTVでは概ね以下のような順番で伝えている。

習近平:私と大統領は先月ドイツのハンブルグで、とても素晴らしい会談をすることができました。われわれは中米両国の指導者として、共通の問題に関して緊密な連携を保ち続けましょう。対話と交流を通して、各領域における問題を解決し、中米関係の安定的な発展を遂げることは非常に重要です。中国は総統先生(大統領)が年内に中国を正式訪問なさるよう、準備万端を整えて、お待ちしています。

トランプ
:ハンブルグで習近平主席と再びお話をすることができたのは、誠に嬉しい限りです。私と習主席が重大な問題に関して常に緊密な連携を取り合って協調し、米中両国が各領域で交流を深めていくことは非常に重要です。現在、米中関係は非常にうまくいっており、この後もさらに良好な発展を遂げていくと信じています。私は中国を国事訪問することをとても楽しみにしています。

習近平:中米両国は、朝鮮半島非核化を実現するために、朝鮮半島の平和安定を維持するという点において共通の利益を有しています。現在、各関係者は抑制的に行動し、朝鮮半島の緊張を高めるような言動を慎まなければなりません。朝鮮半島の核問題を解決するというとこは、結局のところ、対話と政治的解決という大きな方向性を堅持しなければならなりません。中国は相互尊重の基礎の上に、アメリカと連携を保ち、ともに力を合わせて朝鮮半島核問題の適切な解決を推進していきたいと思っています。

トランプ:中国が朝鮮半島の核問題に関して役割を発揮していることを十分に理解しています。アメリカはこの後も継続して、共通の国際的および地域的重大な問題に関して中国と密接な連携を保ち続けたいと思っています。

「軍事的解決の準備完了」とツイッターでつぶやきながら、CCTVによれば、トランプは一方では、こんなきれいごとの会話をしているようだ。大勢を決めるカードを、中国が握ってしまったことをトランプは認識したからなのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中