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貧困

シングルペアレント世帯の貧困率が世界一高い日本

2017年7月26日(水)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

さらに1人親世帯の貧困率を、親が働いている世帯とそうでない世帯に分けてみると、日本の驚くべき特性が見えてくる。<図2>は、OECD加盟の32カ国のグラフだ。図中の「瑞」はスウェーデンを指す。

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どの国でも、親が働いていない世帯の貧困率は高い(斜線の均等線よりも下)。収入がゼロか、最低限の生活を営むに足る公的扶助しか得られないのだから当然だ。しかし日本だけは違っていて、親が働いている世帯の貧困率のほうが高い。

就労すれば収入が入るのだから貧困率は下がるはずだが、日本ではそうなっていない。シングルの親が働いても貧困から抜け出せず、むしろ状況が悪化している。世界に類を見ない、きわめて特異な社会だ。フルタイムでの就業が困難、給与の男女差が大きいなどの理由から、シングルペアレントが生活保護レベルの収入を得るのが困難という実態が背景にある。

【参考記事】婚外子が増えれば日本の少子化問題は解決する?

グラフの右下の国では、子どもの貧困は親が働けない世帯への支援の不足という「福祉」の問題だが、日本の場合は前述の通り、働くシングルペアレントが様々な理由から満足な収入を得られていないという雇用問題としての性格が濃いようだ。

日本の貧困率は低下傾向にあるが、目を凝らしてみるとそれが突出して高い層がある。子どもに注目すれば1人親世帯、その中でも親が就労して生活保護等を受けられていない世帯に貧困が凝縮している。こうした要注意層に注目して、今後の支援の重点を置くことが必要だ。

<資料:厚労省『国民生活基礎調査』、
    OECD「Family Database」>

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