最新記事

アメリカ

「これでトランプを終わらせる」マイケル・ムーアが新作を製作中

2017年5月19日(金)17時23分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Mike Segar-REUTERS

<昨年トランプの大統領選勝利を予言した映画監督のマイケル・ムーアが、トランプ批判の新作映画を製作中と発表。その名も『華氏119』>

マイケル・ムーアは、やっぱり企んでいたようだ。

ムーア監督と言えば、アメリカ同時多発テロ9.11に対するブッシュ政権の対応を批判する『華氏911(Fahrenheit 9/11)』を製作したドキュメンタリー映画監督。そのムーアが今週、自身のフェイスブックページでドナルド・トランプ米大統領を批判する新作映画を製作中だと発表した。

作品名は、トランプが大統領選の勝利宣言を行った昨年11月9日にちなんで『華氏119(Fahrenheit 11/9)』だという。

バラエティー紙(ウェブ版)によれば、『華氏119』には2004年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した『華氏911』のスタッフたちが結集し、「極秘裏に」製作が進められてきた。

配給権は『華氏911』のプロデューサー陣に名を連ねていたハーベイ&ボブ・ワインスティーン兄弟が取得。公開時期は発表されていないが、国内外の配給先について今週開幕のカンヌ国際映画祭で「あらゆる可能性を探る」という。

「極秘裏」に製作してきたというが、昨年の大統領選挙中に大声で「反トランプ」を叫んでいたムーアが「何か」を作っていそうなことは明らかだった。

昨年7月には「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」と題した記事を自身のサイトに発表し、「トランプ大統領の誕生」なんてあり得ない、という空気に釘を刺した(この記事の分析は今読んでも「予言か?」というほど的確だ。日本語はこちら)。

大統領選直前には『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』(日本劇場未公開)と題したドキュメンタリー映画を発表してトランプ不支持をアピール。トランプの勝利後はニューヨークのトランプタワーに突撃するなど、ムーアが「トランプ大統領」に真っ向から挑む映画を作るというのは予言するまでもなかった。

『マイケル・ムーア・イン・トランプランド』の予告編


バラエティー紙に寄せたムーアのコメントからも、新作がトランプ政権を批判する意図で作られていることは明白だ。「どんなことが暴露されようとも、彼は倒れなかった。事実、現実、論理で彼を倒すことはできない。彼は自分で何かをやらかしたときでさえ、次の日の朝にはそれまでどおりツイートを開始する。こうした状況を、この映画がすべて終わらせる」と、ムーアは語った。

一方で、映画がどんな内容なのかは謎に包まれたままだ。製作目的が「打倒トランプ」なのだとしたら、ムーアはどんな爆弾を隠し持っているというのだろう。

ムーアがトランプ大統領の誕生を予想できたのは、彼自身が大統領選でトランプを勝たせた「ラストベルト」(かつて製造業の中心地だったが、産業が空洞化し繁栄から取り残された米中西部)の1つ、ミシガン州フリント出身であることとおそらく無関係ではない。

ムーアはこれまで、強者に切り込み、弱者のリアルを切り取る姿勢を貫いてきた。しかし昨年の大統領選でトランプを勝たせたのは、ムーアの出身地ミシガンを含む地域の「声なき弱者」たちだ。

トランプもムーアも、「メディア使い」という点は共通している。トランプに熱狂したのがラストベルトの人々なら、ラストベルトを代弁しようとしてきたのもムーアだった。

トランプvs.ムーア。勝つのは一体どちらなのか。映画公開まで、トランプが大統領でいればの話だが。

【参考記事】マイケル・ムーアの豊かな国探し
【参考記事】ニューストピックス:トランプに迫る弾劾リスク

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
毎日配信のHTMLメールとしてリニューアルしました。
リニューアル記念として、メルマガ限定のオリジナル記事を毎日平日アップ(~5/19)
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中