最新記事

中国

日本はAIIBに参加すべきではない--中国の巨大化に手を貸すな!

2017年5月17日(水)15時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

一帯一路国際協力サミットフォーラムで演説する習近平国家主席(5月15日、北京) Nicolas Asfouri-REUTERS

日本がAIIB参加を前向きに検討し始めたようだ。これがどれだけ危険なものであるか、日本は気づいていない。日中戦争が中国共産党を巨大化させたように、日本のAIIB参加は中国の覇権に手を貸すことになる。

「二階-習近平」会談をCCTVが大きく報道

5月16日夜7時(日本時間8時)、中国の国営テレビCCTVの全国ニュースは、自民党の二階博幹事長と習近平国家主席が対談する様子を大きく報道した。2016年6月に鳩山由紀夫元首相が、中国主導で設立されたAIIB(アジアインフラ投資銀行)の顧問となる「国際諮問委員会」の委員に就任したときも同じだった。

中国は鳩山氏こそが日本最高の日中友好人士であると宣伝したし、今回も中国は二階氏を讃えている。

鳩山氏はあのとき、「世界の多くの国々がAIIBに協力している。AIIBは中国が主導するが、多くの国が中国主導のもとでアジアのインフラ整備を進めることは非常に重要だと考えている。AIIBの重要性は世界が認めている。日米も参加すべき」と語っていた。

今般、中国が主宰する一帯一路サミット(正確には「一帯一路国際協力サミット・フォーラム」)に参加した二階氏も、AIIBへの日本の参加に関して「どれだけ早い段階に決断をするかということになってくる」とした上で、「あまり大きく遅れをとらないうちに、この問題に対応するというぐらいの心構え、腹構えが必要だ」と述べている。

たしかに数の上では、日本主導のADB(アジア開発銀行)の参加国が67ヵ国・地域であるのに対して、AIIB参加国は77ヵ国・地域とADBを上回ってはいる。

しかし、AIIBが「一帯一路」構想とペアであることに、日本は気付いているだろうか?

そして「一帯一路」構想は、実は中国が陸と海の新シルクロード構想として「巨大経済圏」を謳いながら、実は 安全保障に関して世界を制覇するもくろみで動いていることに目を向けているだろうか?

新植民地政策が現れている例

たとえばスリランカの場合、南部にあるハンバントタ港は中国からの融資(年利7%弱)で建設された。完成しても船舶の利用が少ないため、ゴーストタウンならぬ「ゴースト・ポート」化している。財政難にあえぐスリランカ政府は昨年、11億ドルで港湾管理企業の80%を「99年間」中国企業に貸し出すこととなった。

この「99年間」!

皆さんは、なんの数値を連想なさるだろうか?

それはアヘン戦争後の1898年に、イギリスが香港を清朝政府に割譲させ、「99年間の租借」を決めた数値と一致する。香港は99年後の1997年に中国に返還されたが、それまで「99年間」、イギリスの統治下に置かれたことは、今さら言うまでもないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

クシュタール、セブン&アイへの買収提案撤回 真摯な

ビジネス

関税で物価圧力、インフレ転換点の可能性=米アトラン

ビジネス

米関税影響まだ初期段階、インフレ1%押し上げへ=N

ワールド

EU、包括的対ロ制裁案を依然可決できず スロバキア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏にも送電開始「驚きの発電法」とは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中