最新記事

アメリカ政治

バレンタイン監督が駐日大使に? トランプ政権人事の発想はまるで野球映画

2016年12月13日(火)17時30分
エミリー・タムキン

Jessica Rinaldi-REUTERS

<トランプ次期大統領の政権移行チームが、バレンタイン監督の駐日大使への起用を検討しているという。あらためて政権人事を見てみれば、往年の野球映画から発想を得たとしか思えないような顔ぶれが......>(写真はボストン・レッドソックス時代のバレンタイン監督)

 ドナルド・トランプ次期大統領は現在、次期政権のメンバーとなる長官や顧問、大使を指名中だが、もしその人事の発想が野球映画にあるとしたら――ここで「ワンストライク!」と叫ぶ前に、その詳細を見ていきたい。

 報道によるとトランプは、「ニューヨーク・メッツ」や「ボストン・レッドソックス」の監督を歴任したボビー・バレンタイン(日本では千葉ロッテマリーンズの元監督)を駐日大使として指名することを検討している。1992年に公開されたコメディー映画『ミスター・ベースボール』では、ピークを過ぎたメジャーリーグの選手が、日本の「中日ドラゴンズ」にトレードされる。日本で、様々なカルチャーギャップに遭遇し、多くの笑いと少々のロマンスが巻き起こる。トランプは、この映画のようなドタバタ劇を期待しているのだろうか?

 またトランプが駐中大使に選んだのは、アイオワ州知事のテリー・ブランスタッド。自称「親中派」で、習近平国家主席とも親しい間柄にあると言われている。アイオワ州と言えば、1989年公開の『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった場所だ。トウモロコシ農家の主人公が、夢の球場を建設する感動的な物語だった。

【参考記事】オルト・ライト(オルタナ右翼)とは何者か

 トランプ自身は大統領選で、政界のアウトサイダーとしての言動が支持され、歴史的な番狂わせを演じ切った。天才野球選手と呼ばれながらプロ入りできずにいた男が、35歳にして「奇跡のルーキー」としてメジャーリーグで活躍することになる映画『ナチュラル』の主人公の気分を、トランプは味わっていたのかもしれない。

 国家経済会議の委員長に、ゴールドマン・サックスのコーン社長が起用されると聞いた時には、経営危機に瀕した球団を、統計学的データを駆使して建て直そうとする映画『マネーボール』が思い浮かんだはずだ。

 そして多くの政治評論家は口を揃えて、今年の大統領選は弱小チームが快進撃を続ける『メジャーリーグ』のようだと言うだろう。この先はトランプが人々の不安を振り払うことができるかどうか(『Fear Strikes Out』[1957年公開、邦題は『栄光の旅路』])、見届けなければならない。

 残念ながら、女子プロリーグ選手の活躍を描いた『プリティ・リーグ』のような展開は期待できそうにない。トランプが元妻イバナの意向を尊重し、彼女をアメリカ大使としてチェコに派遣するというなら話は別だが。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米HPが3年間で最大6000人削減へ、1株利益見通

ビジネス

米財政赤字、10月は2840億ドルに拡大 関税収入

ビジネス

中国アリババ、7─9月期は増収減益 配送サービス拡

ワールド

米陸軍長官、週内にキーウ訪問へ=ウクライナ大統領府
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中