最新記事

王毅外相はなぜ岸田外相の電話会談を承諾したのか?

2016年3月16日(水)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

全人代を抜け出してモスクワに飛んだ中国の王毅外相(左)とロシアのプーチン大統領 Alexander Zemlianichenko-REUTERS

岸田外相は14日、王毅外相と電話会談をした。なぜこのタイミングで中国はようやく応じたのか。その回答は王毅外相のロシア訪問と香港における北朝鮮船舶の入港拒否に求めることができる。中国政府関係者を取材した。

なぜ、このタイミングなのか?

 岸田外相が3月14日夜、中国の王毅外相と電話会談したことを明らかにした。今年1月6日、北朝鮮が水爆実験と称する核実験を強行したあと、日本の外務省は何度か電話会談をしようと中国に呼びかけていた模様だ。しかし中国側が応じなかったという。

 2か月間以上経ってから、中国がようやく電話会談に応じたことに関して、「なぜこのタイミングなのか」と記者から聞かれた岸田外相は「先方の意図は分からない」と回答した。

 そこで筆者は「先方(中国)の意図」を知るべく、中国政府関係者を電話取材し、「なぜこのタイミングなのか?」と、同じ質問を投げかけてみた。

 すると、以下の回答を得た。

1. 王毅外相がロシアを訪問したことに注目しているだろうか? 彼はなぜ、わざわざ全人代を中途で退席し、閉幕前にロシアを訪問しのか、その理由を考えてほしい。

2. 先般、北朝鮮の貨物船が香港に入港しようとしたけれど、拒否された。中国が拒否したのだ。

3. この二つに共通なことは、北朝鮮問題だ。中国は国連制裁決議をきちんと守っているが、決議の際に消極的だったロシアとは、しっかり話し合って制裁決議を守るよう、しかしその一方では北朝鮮が暴走しないように朝鮮半島の安定を図らなければならない。アメリカは自国の国民が遥か離れたところにいるからいいだろうが、われわれは陸続きなのだ。六者会談以外にわれわれの安全を守るすべはない。

全人代を欠席してロシアを訪問した王毅外相

 中国の王毅外相は、3月10日から11日にかけて、ロシアのラブロフ外相の切迫した招きに応じてモスクワを訪問した。全人代開催中に海外に行くのはよほどのことで、48時間の休暇を承認してもらった上での外訪だった。11日、クレムリン宮殿を訪問し、プーチン大統領とも会談している。

 3月14日、中国外交部の陸慷報道官は定例記者会見でつぎのように述べた。

――現在の朝鮮半島情勢に関して、中露はともに6カ国協議の再開を支持している。THAADの問題に関して中露双方は、米国による韓国へのTHAAD配備は朝鮮半島の実際の防御の必要性を遥かに超えており、中露の戦略的安全保障上 の利益を直接損ない、地域の戦略的均衡も破壊するとの認識で一致している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FBI長官解任報道、トランプ氏が否定 「素晴らしい

ビジネス

企業向けサービス価格10月は+2.7%、日中関係悪

ビジネス

アックマン氏、新ファンドとヘッジファンド運営会社を

ワールド

欧州議会、17億ドルのEU防衛産業向け投資計画を承
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中