最新記事

中台関係

「人民元」に謝罪させられた台湾アイドル――16歳の少女・周子瑜

2016年1月18日(月)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「中華民国」の国旗を振ったことを、周子瑜は公開で謝罪した jypentertainment-YOUTUBE

 韓国で活躍している周子瑜さんが中華民国の国旗を持ってテレビに出たとして謝罪会見を強要された。15日、中台のネットが炎上。台湾メディアは告発したタレント黄安さんを売名売国として排除し、民進党には追い風になっている。

周子瑜さんが謝罪を強要された経緯

 これに関しては他のメディアも報道しているので、簡単に説明するに留めたい。

 今年16歳になる周子瑜(ツウィ)さんは、台湾出身のタレント。韓国少女グループTWICE(トワイス)のメンバーに選ばれ、韓国を舞台として活躍していた。

 去年11月、自分が台湾から来たことをアピールするために韓国人アイドルの中で「中華民国」の国旗である小さな青天白日旗を韓国の国旗とともに振って見せた。番組制作者の指示によるものだろう。

 この画面は中国大陸のネット空間にも数多く転載された。

 それを観た台湾の男性タレントで中国大陸を主な舞台として活躍している北京在住の黄安さんが中国のツイッター「微博(ウェイボー)」で「周子瑜は台湾独立派だ」という悪口を書いた。そこで中国大陸のネットが燃え上がり、周子瑜さんへの罵倒が始まったのである。

 実は周子瑜さんは、中国の旧正月である春節の夕べの大型地方番組(安徽省主催)に出演することになっていた。彼女のファンは中国大陸にも大勢いる。しかし、この罵倒が始まると、1月13日に、予定されていた安徽省BSの春節番組担当者から降板の知らせを受けた。降板の知らせもネットで公開されている。このサイトの下の方にいる男性が黄安だ。彼は「我是反台独(私は台湾独立に反対です)」というプラカードを持ち、大陸におけるビジネス活動を確保しているのである。中国におもねる表情が見て取れる。

 一方、中国から睨まれたらビジネスが立ち行かなくなると考えたのだろう、TWICEが所属する韓国のタレント会社JYPエンターテインメントは、周子瑜さんに公開謝罪を強要。

 その場面はネットを通して全世界に広がっていった。

 中国大陸における公開謝罪場面には「環球時報が、これは台湾独立に反対する大陸のネットユーザーの完勝だと評した」というタイトルが付いている。

 こちらには英語もハングルも中国語もあり、各国の反応の声もある。広告をスキップすれば、見やすいかもしれない。

 自信を失ってうろたえているような顔で、周子瑜さんは「中国は一つです。海峡両岸は一体化しています。私は中国人であることを誇りに思っています。両岸のネットユーザーたちの心を傷つけたことを、心からお詫びします。私はしばらく中国におけるいっさいの活動を中止して反省しようと思います。皆さん、本当に申し訳ありませんでした」などと、紙を見ながら読み上げて謝罪した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、ウクライナ・イスラエル支援法案可決 24日

ビジネス

米、競業他社への転職や競業企業設立を制限する労働契

ワールド

ロシア・ガスプロム、今年初のアジア向けLNGカーゴ

ワールド

豪CPI、第1四半期は予想以上に上昇 年内利下げの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中