最新記事

中台関係

「人民元」に謝罪させられた台湾アイドル――16歳の少女・周子瑜

2016年1月18日(月)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

環球網のネットユーザーが黄安を批判

 1月15日にアップされた環球網の海南省海南市のネットユーザーは、黄安氏を「彼は国や民のために良いことをやったのではなく、同業者を売り、同郷者を売り、大陸で英雄になろうと思っただけだ」として厳しく批判している。「こういう行為は、台湾内の統一を支持する者の声を逆に押しつぶしてしまう。周子瑜さんは台湾独立支持派でもなんでもないのに、これでは逆に台湾独立派に有利に働いてしまうだろう」と書いている。

民進党に追い風――周子瑜の公開謝罪により民進党は50万票多く得票

 事実、投票前日における周子瑜の公開謝罪は、民進党に強烈な追い風になったとして、米英の各メディアが書き立て、台湾の国民党は、この公開謝罪を敗因の一つとして言い訳をしているほどだ。

 VOA(Voice of America)の中文版は、「ニューヨークの台商会の会長が"公開謝罪により民進党は50万票、得票を伸ばした"と言った」と書いている。

 ニューヨークタイムズの中文網も、「周子瑜は台湾人だ」という意思表示をして、大勢のニューヨークにいる台商たちが集まり、気勢をあげた。

 またイギリスのBBCもこの事件を取り上げ、国民党の馬英九総統が、投票日の朝、あわてて「周子瑜は謝罪すべきでなかった」とBBCの取材に答えているが、時すでに遅し。国民党がふたたび天下を取ったら、こういう「強制謝罪」が起き続け、「台湾人としての尊厳を傷つけられるのだ」という危機感を、台湾の投票者は抱いたという。

 筆者も台湾の若者を取材してみたが、「悪いのは黄安だ。周子瑜は可哀そうだけど、謝罪すべきでなかった」というのが大多数の意見だった。

「それにしても、投票日前日に公開謝罪などさせたら、逆効果になるとは思わなかったのだろうか?」と、ある若者は言っていた。

黄安さんを閉め出した台湾メディア

 台湾の国民党にも民進党にも嫌われてしまった黄安さんは、メディアから一斉に閉め出されたというニュースが環球時報にも載り、それが数多く転載されている

 安徽省合肥(he-fei)市のウェブサイトも、中国青年網の記事を転載し、好意的に黄安さんを描いてはいない。

 黄安さんはこれまで、何人もの台湾や香港のタレントを告発し、「北京政府寄りでないこと」を以て、彼ら彼女らが大陸で活動できないようにして、大陸の芸能界で自分だけが生き残れるようなことばかりをしてきた。

 だから今般の閉め出しを、「自業自得だ」と軽蔑する人が多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者32人に、子ども14人犠牲 

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中