最新記事

少数民族

ウイグル人なら射殺も辞さない中国に噛み付くトルコ

国際社会が黙認してきた弾圧にトルコ系イスラム教徒が異議を表明。民族と宗教の絆は少数民族を救うのか

2015年8月28日(金)16時45分
楊海英(本誌コラムニスト)

トルコは立ち上がる ウイグル人弾圧に抗議するイスタンブールの反中国デモ Ahmet Bolat-Anadolu Agency / GETTY IMAGES

 7月にトルコの首都アンカラやイスタンブールで、トルコ系イスラム教徒のウイグル人を迫害する中国政府への抗議デモが起きた。韓国人観光客らが中国人と間違われてトルコ人に襲われ、タイ領事館が襲撃される騒ぎも発生した。

 領事館襲撃は、中国新疆ウイグル自治区こと東トルキスタンから脱出していたウイグル人約100人を、タイ政府が中国へ強制送還したことへの抗議だった。6月末には同じように亡命を希望していたウイグル人173人をトルコへ引き渡したのと対照的なタイの対応に、アンカラとイスタンブールの住民は激怒している。

 中国に対するイスラム世界の厳しい姿勢はラマダン(断食月)に入った直後の6月中旬から見られた。東トルキスタン南部のホータンでは、戒律を守って慎み深く暮らしている敬虔なムスリムたちに対して、地元の中国共産党政府は隣で華やかなビールパーティーを連日昼夜にわたって開催して挑発。「共産党員は邪教を信じてはならない」との通達も自治区の津々浦々に回され、ウイグル人公務員の断食も禁止。ウイグル人が経営する食堂も平常どおりの営業を命じられた。

 こうした抑圧政策にウイグル人たちが少しでも異議を唱えたりすると、たちまち「民族分裂主義者」か「過激な宗教思想の信者」として逮捕、連行される事態も日常茶飯事となっている。

 中国全土における暴動の件数は年間十数万に上る、と北京にある政府系シンクタンク、中国社会科学院の研究者は数年前に明らかにした。今も状況はさほど変わらないどころか、悪化しつつある。

 中国の治安当局が暴動に対処するとき、根本的に異なる2つのやり方を取っていることに、国際社会は気付いている。万里の長城以南の中国本土では安易に「暴徒」を殺害しないのと対照的に、ウイグル人はすぐさま射殺する点だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落、1000円超安で今年最大の下げ

ワールド

中国、ロシアに軍民両用製品供給の兆候=欧州委高官

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明、無所属候

ワールド

IAEA、イラン核施設に被害ないと確認 引き続き状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中