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タイでデモが繰り返す理由

2014年1月14日(火)16時55分

 反タクシン運動は、タイで最も古い政党である民主党と繋がっている。民主党は90年代初頭から総選挙に1度も勝てていない。党のキーパーソンであるステープ元副首相は、彼の仲間たちによって選ばれる「人民議会」が設置されなければ、永遠に汚職と悪政がタイを蝕み続けると主張する。

 ステープ元副首相とデモ隊のリーダーたち50人は、警察当局から、暴動と「国家を混乱させた」容疑で出頭命令が出ている。だがタイでは、混乱状態を発生させた人々が目的を達成させる傾向がある。

 08年、「黄シャツ」として知られた反タクシン派のデモ隊は、首相官邸に乗り込み、空港を封鎖した。彼らのデモにより、裁判所はタクシン派が支配する政党の解散を命じた。

 10年には「黄シャツ」のライバルである「赤シャツ」が数カ月にわたりバンコク市内の要所を占拠。有刺鉄線や竹で囲まれた彼らの占拠キャンプは選挙を中止させるというより、総選挙を実施させることを目指した。

 結局デモ隊は軍の弾圧で制圧され、90人が死亡する事態となった。当時副首相だったステープは、アピシット・ウェチャチワ首相と共に、デモ隊に実弾を使用して殺人を犯したとして後に起訴された。

 だが流血の騒動は11年の総選挙に道を開き、インラック首相とタイ貢献党による政権を誕生させた。

 不安定な情勢に住民はもう慣れたものだ。メディアで予測された交通麻痺の影響を回避するため、道路封鎖の初日、通勤者の多くはバンコクの運河を航行する船など普段と別の交通手段を利用した。自宅にこもっていた住民もいた。

「デモをするのは私たちの権利だ」と、派手なモールに囲まれ普段から混雑する交差点に設営したテントで、76歳のプイ・ワララクチャットは言った。「誰も私をここから退去させることはできない。救急車は通らせる。ただ警察は? ぜったいに通さないね」

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