最新記事

トルコ

ツイッターでイスタンブールに嵐

トルコ全土に広がる反政府デモ参加者をつなぐツイッターにエルドアン首相がキレた

2013年6月4日(火)15時56分
ウィル・オリマス

不満が噴出 イスタンブールのタクシム広場を占拠したデモ隊 Stoyan Nenov-Reuters

 トルコの最大都市インスタンブールで始まった大規模な反政府デモは全土に広がり、収まる様子がない。1700人以上が拘束され、死者1人と数千人規模の負傷者が出ている。

 きっかけはイスタンブール中心部にあるゲジ公園の再開発計画だった。先月27日、計画に反対する人々が始めた抗議デモを警察が催涙ガスなどで鎮圧しようとしたことで高圧的な政府への批判が拡大。イスラム系与党を率いるレジェップ・タイップ・エルドアン首相が最近、アルコール類の販売規制を導入したことも人々の不満を呼んでいた。

 03年から続くエルドアン政権下では最大規模の抗議行動だが、なぜこんなことになったのか。エルドアンに言わせれば、ツイッターのせいだ。

 彼は記者会見で、デモ参加者を「略奪者」「なまけ者」と見下し、野党が彼らをたきつけていると強く責め立てた。

 ただし、エルドアンが最大級の非難を向けたのはツイッターだ。ツイッターは活動家たちをつなぐ場となり、国内大手メディアがデモ騒動をあまり報じない中で重要なニュース源になっている。

 通信社によって翻訳の仕方は違うものの、エルドアンはツイッターを「呪い」や「脅威」や「災難」、またはそれらを組み合わせた言葉で呼んだ。ニューヨーク・タイムズはエルドアンの言葉を以下のように引用している。


 今、ツイッターと呼ばれる脅威が登場している。そこでは、嘘というものの最たる例を見ることができる。私にすれば、ソーシャルメディアは社会に対する最悪の脅威だ。


 最悪の脅威! 貧困や温暖化、犯罪、はては野党よりも恐ろしい脅威だというのか? なんて高飛車なのだろう。

 そうした彼自身の考え方は別にして、エルドアンはこの脅威(または呪い/災難)と今すぐ戦うつもりはないようだ。政府によるインターネットの接続停止がちらほら報じられたにもかかわらず、ツイートやフェイスブックの投稿、インスタグラムの写真はあふれ続けている。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、東部要衝都市を9割掌握と発表 ロシアは

ビジネス

ウォラーFRB理事「中銀独立性を絶対に守る」、大統

ワールド

米財務省、「サハリン2」の原油販売許可延長 来年6

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中