最新記事

新興国

民主化ビルマのビジネスチャンス

2012年2月29日(水)15時21分
トレファー・モス(ジャーナリスト)

早くも乗り込む近隣国

 開発の遅れによる供給不足のせいで、ラングーンの不動産市場はバブル状態。価格は、タイの首都バンコクに並ぶレベルに高騰している。

「今のラングーンでは不動産の供給量が極めて限られており、需要は高まる一方。ホテルやオフィスや集合住宅の収容能力は限界に近い」と、コリアーズ・インターナショナルのタイ支社の調査部門幹部トニー・ピコンは話す。「(外国企業の新規参入の)鍵となる分野の1つは、ホテルや短期滞在型アパートメントだろう。観光客が増え、視察で訪れるビジネスマンも多い」

 規制の壁を乗り越え、利益を手にする外国企業も既に現れている。「一部のアジア企業はビルマ人を表向きの代表者にしたり、裏で提携するなど、巧みなビジネス手腕を発揮している」と、マッコーリー大学のターネルは言う。

 早々にビルマへ乗り込んでいる中国やタイ、マレーシアやシンガポールといったアジアの企業に比べ、ヨーロッパやアメリカの企業は出遅れたとの見方もある。ただレオパード・キャピタルのクレイトンは、そうした考えに異を唱える。「ビルマにあふれるチャンスは、1つや2つの国では独占し切れない。欧米企業にも勝機はある」

欧米企業を誘致したい訳

 ビルマ政府は欧米の関与を積極的に求めていると、ターネルは言う。「特に金融サービスの分野では、できることなら欧米から投資を受けたがっている」

ビルマ政府にとって、これは単なるビジネスの問題ではない。彼らが求めているのは、国際社会の一員として受け入れられること。有名な欧米企業がビルマに進出してくれれば、その証しになる。戦略的な観点からも、増大する中国の影響力をそぎたい方針にもかなう。

 残る最大の難問は、押し寄せる外資をビルマの国民のためにどう生かすか、という点にある。ビルマが資源大国ならではの罠に陥り、外国人投資家や国内のエリート層が暴利を貪る一方で、一般市民がないがしろにされるリスクはもちろんある。

 自らの懐だけでなく、ビルマの国民も潤すことができるかどうか。これこそ、テイン・セイン政権とビルマに進出する外国企業の真価が分かる「リトマス試験紙」だ。

From the-diplomat.com

[2012年2月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中