最新記事

新興国

民主化ビルマのビジネスチャンス

2012年2月29日(水)15時21分
トレファー・モス(ジャーナリスト)

経済規模はいずれ10倍に

 東芝など日本の大手メーカーの役員は先月、枝野幸男経済産業相のビルマ訪問に同行したが、ハイテク産業にとって魅力的な材料は少なかったに違いない。

 それなのに、今やビルマが各国企業の注目の的になっているのはなぜか。チャンスが転がる分野があるからだ。

「(米国務長官のヒラリー・)クリントンと(英外相のウィリアム・)ヘイグの訪問以来、関心が広がっている」と言うのは、東南アジアを主要な投資対象とするプライベートエクイティ・ファンド(未公開株投資ファンド)運用会社、レオパード・キャピタルのダグラス・クレイトンCEOだ。「投資家の視界に入り始めた」

 大半の企業はビルマの法改正の結果待ちで、今のところ「投資段階」でなく「調査段階」にとどまっている。それでも改革次第で、1〜2年後には投資段階に突入するだろうと、クレイトンは言う。

 保守的傾向が強い多くの企業は、先に挙げた事情のせいで今後もビルマを敬遠するはずだ。だが未開拓の地域に、リスクでなく商機を見いだす企業もある。そうした一部の企業にとって、ビルマは期待の星だ。

「ビルマほどの大きさで、多国籍企業がほとんど進出していない国はあまりない」と、クレイトンは指摘する。「あれほどの国土があれば、経済規模が今の10倍になる潜在力がある。しかもビルマは投資業界の2大大国、中国とインドの中間に位置している。途上国の中でも特殊な地理的条件だ」

 現段階で、外国企業が最も関心を寄せているのは資源採取と発電部門だ。全米アジア研究所のジャレッド・ビシンジャー研究員が指摘するように、昨年3月までの1年間にビルマが取り付けた外国投資200億ドルの行き先は、ほぼすべてがこの2つの分野だった。

 法改正の先行きが不透明ななか、豊かな天然資源を誇るビルマでは今後もこの2つの分野が外国企業を呼び込む材料になるだろう。「こうした分野なら、ビルマの労働力や金融とあまり関わらなくて済む」と、マッコーリー大学のターネルは言う。

 とはいえターネルがみるところ、特に新法案が可決された場合は、ほかの分野への関心も将来的に増すはずだ。ビルマの観光業は大きな可能性を秘めているし、絶望的に不足するインフラは今後数十年間に、外国企業の手で整備される可能性が高い。未熟な金融部門には外国からの投資が不可欠で、不動産部門にも外国企業がどんどん参入してくるに違いない。

 関心の高まりを受け、国際的不動産サービス企業のコリアーズ・インターナショナルは昨年10月、ビルマの中心都市ラングーン(ヤンゴン)の不動産市場報告書を初めて発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 4
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中