アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半ば
世界初の年次気候変動対策の会議から30年。写真は主要国の対策は不十分だと抗議する活動の様子。11月5日、ブラジルのベレンで撮影(2025年 ロイター/Adriano Machado)
Valerie Volcovici Richard Valdmanis
[6日 ロイター] - 世界初の年次気候変動対策の会議から30年。第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)に合わせて各国の首脳級がブラジル・ベレンに集まっているが、一方で地球温暖化対策の進捗状況を示すデータは、厳しい現実を突き付ける。
長年にわたる交渉や取り決めの締結、そして数々の首脳会談にもかかわらず、温室効果ガス排出量は最初の会合以来3分の1増加し、化石燃料の消費量は増加し続け、地球の気温は科学者が地球に壊滅的な被害をもたらすと指摘する閾値を超えようとしている。
「会議から一定の成果は生まれてきた。だが、地球上の生命を守るには十分ではない」と語るのは、パナマの気候変動特別代表、フアン・カルロス・モンテレー氏。同氏は主要な環境協定の簡素化・合理化を推し進めようとしている。
<データの向こう側>
この厳しい評価は、11月10日からベレンなどで開催されるCOP30を前に、根源的な問いを突きつける。地球温暖化対策の国際外交は失敗しているのか。それとも、データには表れない形で、会議は成果を上げてきたのか。
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局のトップ、サイモン・スティール氏は、年次会合は「大きな前進」を生んだと強調する。一方で「気候災害があらゆる国を襲っている今、明らかにより多くの対策が、より迅速に講じられる必要がある」とも述べる。
1995年以降、世界の温室効果ガス排出は34%増。それ以前の30年間の64%増に比べれば増加ペースは鈍ったが、科学者によれば、気候の安定と両立しない軌道にとどまっている。
バイデン前米大統領の下で気候変動特使を務めたジョン・ケリー氏は、「この問題を解決する時間はまだある。約束したことを実行すれば、この戦いに勝つことはまだ可能だ。勇気を出して行動に移すだけだ」と述べた。
気候変動問題を扱う世界資源研究所は10月の報告書で、2035年までの温室効果ガス排出削減に関する各国政府の目標は、世界の気温上昇を産業革命以前と比較して1.5度以内に抑えるには依然として不十分だと指摘した。1.5度は、15年にパリで採択された画期的な気候変動協定(パリ協定)で世界各国政府が設定した目標値だ。
地球の平均気温の上昇は1.5度を超えた年もあり、23年と24年は観測史上でも最も高温の年となった。ただし、パリ協定の基準である30年移動平均では、なお1.5度の上昇を下回る。
「不幸なことに、目標を超えてしまうことは避けられないだろう」と語るのは、カリブ共同体(カリコム)の気候特使で、セントルシアの元エネルギー相、ジェームズ・フレッチャー氏。「1.5度を上回る温暖化は、小さな島々の途上国にとって壊滅的だ」と続ける。
スティール氏は、COPのプロセスがなければ、世界の気温は壊滅的ともいえる5度上昇に向かっていたはずだと指摘した。現在の見通しは3度未満の上昇だという。
一方で、地球温暖化の主な原因である化石燃料の消費は、高止まりが続く。けん引するのは経済成長に加え、人工知能を支えるデータセンターの電力需要だ。
国際エネルギー機関(IEA)の見通しでは、燃焼時に最も汚染度の高い化石燃料の一つである石炭の需要は、27年まで記録的水準付近で推移。中国やインドなど新興国での需要増が、他の地域の減少を相殺する。他方で、太陽光と風力の導入は加速し、電気自動車(EV)の世界販売は急伸、エネルギー効率も全体として改善している。
IEAのデータによると、クリーンエネルギーへの世界の投資額は昨年2.2兆ドル(約336兆6000億円)に達し、化石燃料への投資額1兆ドルを上回った。
「クリーンエネルギー技術が進歩し、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの価格が下がるとは、10年前には夢にも思わなかった」と、ドイツの元気候変動特使でCOPに何度も参加しているジェニファー・モーガン氏は語った。
それでも、再生可能エネルギーとEVの増加は、主として増え続けるエネルギー需要を相殺したに過ぎず、化石燃料の本格代替には至っていない。米国ではトランプ大統領が、気候変動を世界最大の「詐欺」と呼び、風力・太陽光やEV向けの補助金を削減。再エネ事業に新たな認可手続きを課してハードルを高め、掘削や採掘のための公有地の開放を拡大している。
米ホワイトハウスのロジャーズ報道官は「トランプ大統領は、他国を破滅させている漠然とした気候変動目標を追求するために、我が国の経済と国家安全保障を危険にさらすつもりはない」とロイターに語った。
<成功と問題点>
米国でのこうした逆風にもかかわらず、COPプロセスの最大の成果とも言われるパリ協定は持ちこたえてきた。トランプ氏の任期で米国が離脱した後も、である。
つまり各国は理論上、気候変動の最悪の事態を防ぐというコミットメントを維持している。ただし、約200カ国の全会一致を要するCOP交渉の合意方式には批判が出ている。
「われわれは書類、報告書に溺れている。命を何人救ったかではなく、書類が何ページあるかで評価される仕組みに溺れている」と、前出のモンテレー氏は語る。「体系的な改革が必要だ」
パリ会議で国連のUNFCCC事務局長を務めたクリスティアナ・フィゲレス氏は、COPは国際通貨基金(IMF)と同様の投票方式への移行を検討できると述べた。
一方でフィゲレス氏は、世界経済がクリーンエネルギー技術を採用するにつれ、政治的な駆け引きの重要性は低下しているとも述べた。
「今日、移行を牽引する力はもはや政府ではなく、民間部門、産業界、そして技術開発にある」
同氏は、中国を例に挙げた。IEAによると、中国は太陽光、風力、電池、電気自動車産業にわたるクリーンエネルギーへの世界投資の3分の1を占めている。
<触媒か元凶か>
COP経験者の中には、地球規模の問題に対処するために全ての国が議論に参加できるようにするには、現在のプロセスが最善の選択だと主張する人もいる。
「多国間プロセスに代わる方法はないと思う」とペルーで開かれたCOP20の議長を務め、現在は世界自然保護基金(WWF)の気候担当ディレクターを務めるマヌエル・プルガル・ビダル氏は語った。
米国のケリー元特使は、年次会合の欠点を認めつつ、その重要性は揺らいでいないと語る。「十分ではないことは分かっている。だが、辛抱強くプロセスを動かし続ける方が、完全で徹底した虚無主義よりはましだ」
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