最新記事

中国社会

「香港人は犬」発言で中国への怒り爆発

返還後15年、大陸中国と香港は1つになるどころか互いに反感を募らせてきた

2012年1月25日(水)15時57分
プリヤンカ・ボガニ

「二級市民」扱い ドルチェ&ガッバーナの店舗前で、差別的な待遇に抗議する香港市民(1月) Bobby Yip-Reuters

 香港が中国に返還されてから15年。一見すると些細な出来事によって、今なお消えない中国本土と香港の緊張関係が浮き彫りになった。

 事の発端は、香港の地下鉄内で中国人観光客の女性が子供に菓子を食べさせていたこと。香港の地下鉄では車内などでの飲食が禁じられているため数人の乗客が注意をしたところ、激しい口論へと発展した。この時の様子を撮影した映像がインターネットに公開されると、ある中国の学者が香港人を「大英帝国の犬」で「いかさま師」だと非難する発言をした。

 過激発言をした北京大学の孔慶東(コン・チントン)教授は、孔子の末裔を自称する人物。彼は中国のネット番組の中で、「私が知る限り、香港の多くの人々は自分を中国人だと見なしていない。この手のやつらはずっと、イギリスの植民地支配の犬どもだった。彼らは人間ではない。犬だ」とぶちまけた。

 この発言は香港の怒りに火をつけた。中国中央人民政府の出先機関である駐香港連絡弁公室の周囲には、講義のため多くの人々が集結。彼らは孔の発言を非難し、犬を連れて行進した。

 この地下鉄の一件は、中国語(標準語)を話す中国本土の人々と、そんな本土の人々の振る舞いを粗野だと感じている広東語の香港人との間の文化的な摩擦を際立たせた。

 香港の人々の怒りに火をつけた事件はもう一件あった。イタリアの高級ブランド、ドルチェ&ガッバーナのある店舗が、香港の地元住民に店内の写真撮影を禁ずる一方で、中国本土の人々や外国人には撮影を許していたことだ。地元住民はこれに対し、本土の金持ちを優遇する差別的行為だと反発。1000人以上が抗議に詰めかけ、店舗営業は一時停止に追い込まれた。ドルチェ&ガッバーナは香港住民に謝罪した。

 香港返還から15年がたった今も、香港の人々は自分たちを本土の中国人とは別ものだと考えている。香港大学の最近の調査によれば、回答者の中で自らを「香港市民」と認識する人の割合は過去10年でもっとも高くなっている。一方で自分が「中国人」であると考えている人は、過去12年で最低の割合となった。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

必要ならホルムズ海峡で護衛、1週間でイランに打撃 

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、1月は前月比・前年比とも予想外

ワールド

トルコ船舶がホルムズ海峡通航、15隻のうちの1隻に

ビジネス

中国の2月新規融資、予想以上に前月から急減 需要低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中