最新記事

回顧

大はずれ!2010年の予測ワースト6

2010年12月20日(月)19時03分
ジョシュア・キーティング

予測その4


「救済を受けることはない。詳細はまだわからないが、借り入れ保証から別の資金調達先の確保までさまざまな方法があり得る。しかし、施しを受けることはない」

ギリシャのヨルゴス・パパンドレウ首相(2月21日、BBCのインタビューに答えて)

 欧州の首脳がEU(欧州連合)による支援の必要性を否定するときは、きまって悪いサインだ。救済要請を明確に否定したわずか2カ月後、ギリシャのパパンドレウ首相はEUとIMF(国際通貨基金)に正式に支援を依頼。5月に1462億ドルの緊急融資が行われたが、まさに後のないギリギリのタイミングだった。

 ギリシャの財政難がヨーロッパ諸国の財政を脅かすというアナリストらの懸念は的中し、今度はアイルランドが危機に。ブライアン・カウエン首相は来年までの「事前積立」があると宣言したが、その1週間後に1000億ドル規模の支援を要請した。

 そして11月。スペインのホセ・ルイス・サパテロ首相は外部からの支援を必要とする事態は「絶対に」ありえないと語った。つまり、要注意ということだ。 


予測その5


「6月20日以降、米軍がスエズ運河を経由してイラン沿岸に向かっていることに、ほとんどの人は気づいていない。米軍と同等の高性能兵器を備えたイスラエルの軍艦も同行している。私は当初、まず朝鮮半島で衝突が起き、その後すぐにアメリカがイランに戦争を仕掛けるだろうと考えていた。だが事態は違う展開を見せている。イランとの戦争が朝鮮戦争に火をつけそうだ」

キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(6月25日)

 評論好きのカストロは6月の間ずっと、世界が核戦争の瀬戸際にあるというコラムの執筆に忙しかった。当初は、5月の韓国の哨戒艦撃沈事件は北朝鮮を攻撃する口実をつくりたいアメリカの陰謀だと主張。そのうちに考えが変わったらしく、イスラエルとアメリカが南アフリカの「サッカー・ワールドカップの盛り上がりに乗じて」イラン攻撃の準備を進めており、イラン攻撃が朝鮮半島の核戦争を引き起こすと予言するようになった。どちらのシナリオも、当たっていれば大混乱が生じただろう。

 8月に珍しく国会に出席した際も、カストロは朝鮮半島とイランの核戦争危機について警告した。もっとも、演説の中でロシアをソ連と呼び、1万8000年前にビッグバンが起きたという発言をしたらしいが。


予測その6


「濃縮ウランや燃料棒が原子炉に接近し、それがいったん原子炉に入れられてしまえば、原子炉への攻撃は放射能の拡散を意味する。だから、イスラエルに(イラン南部の)ブシェール(の原子力発電所)を攻撃する気があるのなら、チャンスはあと8日間しかない」

ジョン・ボルトン元国連大使(8月17日、フォックス・ビジネスチャネルに出演して)

 イスラエルとアメリカがイランの核開発計画を阻止するためのタイムリミットが迫っているという主張を、ボルトンは少なくとも07年から繰り返しており、昨年の「大はずれ予測」リストにも選ばれている。

 ブシェールの原子力発電所はプルトニウム使用の民生原子炉で、「放射能拡散のリスクはない」と米国務省が発表したが、そんなことはお構いなし。ボルトンは今年も同じ主張を繰り返し、イランの原子炉を攻撃すべきだという主張を続けている。

 しかも、上記の発言では「8日以内」の攻撃を求めていたのに、同じ日に行われたイスラエルのラジオ取材には「3日以内」とコメントする始末。でも、心配することはない。アメリカはボルトンの言うタイムリミットを何度もオーバーしてきたが、ボルトンは相変わらず、今こそイランを攻撃する絶好のタイミングだと信じているのだから。

Reprinted with permission from The List, 20/12/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中