最新記事

イラン

残虐「石打ち死刑」目前のイラン女性

「胸まで地中に埋め、石を投げつけてなぶり殺す」刑が強行されようとしている。国際世論は彼女を救えるか

2010年7月8日(木)16時39分
ラビ・ソマイヤ

「自白は強要された」 既に99回のむち打ちの刑を受けているアシュティアニ Facebook

 イランで姦通罪で有罪となった女性サキネ・モハマディ・アシュティアニ(43)は、彼女を救う運動が土壇場で奏功しない限り、今週末にも石打ちで死刑に処せられる。人権擁護団体によると、アシュティアニは胸まで地中に埋められ、死ぬまで石を投げつけられることになる。

 2人の子供の母でもある彼女は06年5月、姦通罪で有罪となり、99回のむち打ち刑を宣告された(不倫の自白は強要されたものだと彼女は主張)。それ以来投獄されている。同年、夫を殺害した罪にも問われたが、それは無罪になった。

 だが姦通罪についての審理は再開された。英ガーディアン紙によると、「裁判官の知識」に基づいて証拠なしで判決を出せるという規則の下、死刑判決が下された。

 彼女の代理人は人権派弁護士モハマド・モスタフェが務めているが、控訴しても認められなかった。早ければ7月10日にも政府が彼女の処遇を決めると、AOLニュースは伝えている。

「即死するほど大きな石ではいけない」

 人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルによると、イランの刑法では、石打ち刑で使う石は「痛みを与えるに十分なほど大きく、即死させるほどは大きくない」とされている。刑法102条は、石打ちの刑で男性は腰まで、女性は胸まで地中に埋めると規定。同104条は、姦通罪の刑罰について、使う石は「1回か2回で人が死ぬほど大きくてはならず、石の定義に当てはまらないほど小さくてもいけない」と規定しているという。

 イランでは昨年388人が死刑になっており(大半が絞首刑)、死刑の人数は中国に次いで多かったと、アムネスティは報告している。

 アシュティアニの家族は、彼女の救援を世界に呼び掛けている。人権擁護団体によると、ほかに少なくとも2人の女性が石打ちの刑を宣告されている。うち1人は15歳で逮捕され、これまでは18歳未満のため「模擬石打ち」の刑を受けたと報じられている。実際の刑が始まるのは時間の問題かもしれない。

*編集部注: その後のガーディアン紙などの報道によると、アシュティアニの石打ち刑は当面執行されないとイラン当局が発表したが、執行の可能性が消えたわけではないという(7月13日記)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

BRICSは貿易関係強化を、ルラ氏呼び掛け 「関税

ワールド

英中銀の利下げ予想時期を後ろ倒し=HSBCとドイツ

ワールド

イラン核査察協議、時間切れになりつつある=IAEA

ワールド

米最高裁、加州での人種や言語に基づく不法移民強制捜
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    石破首相が退陣表明、後継の「ダークホース」は超意外なあの政治家
  • 4
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒…
  • 5
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 6
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 7
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 8
    コスプレを生んだ日本と海外の文化相互作用
  • 9
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 10
    「日本語のクチコミは信じるな」...豪ワーホリ「悪徳…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中