最新記事
医療

1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?

Superbugs Could Kill Millions by 2050. A 100-Year-Old Treatment Could Help

2025年9月17日(水)13時39分
アリス・ギブス

イスラエルの獣医師たちは、猫の脚の傷口に対して、ファージを組み合わせたオーダーメイドの混合液を直接塗布し、すでに効力を失っていた抗生物質と併用した。

数週間以内に感染が収束し、手術部位も回復。動物に対するパーソナライズド・ファージ療法の実例としては、これが初めての報告となった。

抗生物質はおよそ1世紀にわたって細菌との戦いの切り札とされてきたが、細菌は次第にその効力に対して耐性を強めている。

抗生物質の使用量は2016年以降、21%以上増加している。国際研究プロジェクト「GRAM(薬剤耐性に関する世界研究プロジェクト)」が医学誌『ランセット(The Lancet)』に発表した最新の研究では、抗生物質、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬への耐性を含む薬剤耐性によって、毎年100万人以上が死亡していることが明らかになった。

ファージ療法は、欧米の多くの国ではいまだに実験段階と見なされているが、ジョージアやポーランドなどでは数十年前から実用化されてきた。

今回のような研究成果は、この分野に新たな勢いをもたらし、ファージが将来的に、難治性の感染症に対して抗生物質に取って替わる、あるいは並び立つ治療法となる可能性を示している。

References

Fiyaksel, O. P., Dalvi, S. P., Zhou, B., Ravins, M., Shraiteh, B., Bhattacharya, S., Kirillov, S., Kaur, P., Rosenshine, I., Ghosal, D., & Ben-Yehuda, S. (2025). A bacterial host factor confines phage localization for excluding the infected compartment through cell division. Cell Reports, 44(7). https://doi.org/10.1016/j.celrep.2025.115994

Naghavi, M., Vollset, S. E., Ikuta, K. S., Swetschinski, L. R., Gray, A. P., Wool, E. E., Aguilar, G. R., Mestrovic, T., Smith, G., Han, C., Hsu, R. L., Chalek, J., Araki, D. T., Chung, E., Raggi, C., Hayoon, A. G., Weaver, N. D., Lindstedt, P. A., Smith, A. E., ... Murray, C. J. L. (2024). Global burden of bacterial antimicrobial resistance 1990-2021: A systematic analysis with forecasts to 2050. The Lancet, 404(10459), 1199-1226. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01867-1

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中