「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新技術でこんなに変わった「考古学」の現場風景

The Past Is Closer Now

2025年3月13日(木)16時45分
コリン・ジョイス(在英ジャーナリスト、本誌コラムニスト)

ローマ時代の戦車競技場(コルチェスター)の復元図

ローマ時代の戦車競技場(コルチェスター)の復元図 COLCHESTER ARCHAEOLOGICAL TRUST

近年、特に大きな危険にさらされている遺跡を洗い出し、未来の研究のためにデータベースに記録する取り組みが脚光を浴びている。古い紙の記録やデータベースを調べて、過去の研究者が見落としたものを見いだそうとする動きは既に始まっている。ここでもAIの進化により、調査のスピードが加速しつつある。

考古学は、ほかの分野の手法を活用してきた。リチャード3世の遺体発掘を主導したモリスに言わせれば、考古学者は「アイデアを盗み、組み合わせ、修正する」ことが得意だ。


考古学は過去を引き寄せる

例えば、フォトグラメトリー(写真測量法)は賭博産業の知見に大きく依存している。上空からレーザー照射を行うLiDAR(ライダー)技術は、環境科学で発展してきた手法だが、考古学者はこの技術を活用し、草木などに隠れた構造物や土地の形状を上空から明らかにしている。一方、考古学者がこれらの手法を実地で用いることにより、テクノロジーの発展に貢献している面もある。

考古学はあまり利益を生まない。エジプトの「王家の谷」のように大勢の観光客を集める遺跡は、ほんの例外でしかない(コルチェスターの戦車競技場を見ればよく分かる)。その結果、考古学者には短時間で効率的に調査を行うスキルが育まれる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロ産原油、割引幅1年ぶり水準 米制裁で印中の購入が

ビジネス

英アストラゼネカ、7─9月期の業績堅調 通期見通し

ワールド

トランプ関税、違憲判断なら一部原告に返還も=米通商

ビジネス

追加利下げに慎重、政府閉鎖で物価指標が欠如=米シカ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中