最新記事

海外ノンフィクションの世界

あの『アルマゲドン』で滅亡を避けられる!? 『コンテイジョン』だけじゃない「予言の映画」11選

2021年3月9日(火)21時10分
藤崎百合 ※編集・企画:トランネット
小惑星の衝突

adventtr-iStock.

<小惑星衝突からパンデミック、老化、最終核戦争まで、映画を活用して科学の面白さを伝えるイギリス人の2人組がいる。彼らによれば、小惑星に核爆弾を仕掛ける『アルマゲドン』方式も、決して荒唐無稽ではない>

新型コロナウイルスが話題になり始めた昨年初め頃から、ぜひ観るようにと勧める声があちこちで聞かれるようになった映画がある。パンデミックの脅威を描いた『コンテイジョン』(2011年、スティーブン・ソダーバーグ監督)だ。

この映画が話題になったのは、描写のリアルさと科学的正確さが際立っているためだけではない。観る者を物語世界へと引き込み、ストーリーを追体験させ、現実の自分の身に置き換えて考えさせるという、映画の持つ強烈な力を、皆が知っているからだろう。

映画の持つこの力をフル活用して、科学の面白さを伝えるイギリス人の2人組がいる。ジャーナリストでテレビ番組の司会者も務めるリック・エドワーズと、量子物理学の博士号をもつサイエンスライターのマイケル・ブルックスだ。

2人のポッドキャスト番組「Science(ish)」では、毎回人気映画が1本選ばれて、背景となる科学や面白ネタが縦横無尽に語られる。これが大きな反響を呼んで、書籍『すごく科学的――SF映画で最新科学がわかる本』(筆者訳、草思社)として結実した。

その第2弾が『ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学』(筆者訳、草思社)。「死」と関連する11本の映画と科学が深掘りされている。

『ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学』の最初のテーマはまさに「ウイルスによるパンデミック」であり、取り上げられた映画は本稿冒頭の『コンテイジョン』だ。だが、新型コロナへの便乗などではない。原書の出版は2019年10月と、新型コロナ発生の直前なのだから。

本書の販促のために、2人してウイルスをばらまいたわけでもない(たぶん)。では、もしや予言の書なのか?

そういえば、続く第2章のテーマは「小惑星の地球衝突」なのだが、確かに2020年11月に小惑星がかつてないほど地球に接近していた!(参考記事)

ちなみに、この章で取り上げている映画『アルマゲドン』(1998年、マイケル・ベイ監督)は、石油掘削工を宇宙船で小惑星に送り込み核爆弾を仕掛けさせるというかなりトンデモな内容だ。

ところが本書によれば、数ある衝突回避策の中から人工知能が最善策として選んだのは、核爆弾を小惑星内部に仕掛けるというこの『アルマゲドン』方式だというのだから、ハリウッド映画もなかなかたいしたものだ。

本書が予言の書かといえば、実際のところは、「一番現実的に起こりそうだから」パンデミックや小惑星というテーマが選ばれたようだ。だが、著者たちに科学的センスと先見性があることは明らかだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、一部銀行の債券投資調査 利益やリスクに

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 修繕住宅

ビジネス

ECB、イタリアに金準備巡る予算修正案の再考を要請

ビジネス

トルコCPI、11月は前年比+31.07% 予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 9
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 10
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中