「CO₂から作る」樹脂で配線器具をサステナブルに...パナソニック「炭素資源循環」の挑戦

CO₂削減インパクトの創出を目指して
パナソニックでは、2022年に独自の長期環境ビジョン「パナソニック・グリーン・インパクト」を発表。2050年までに3億トン以上のCO₂削減インパクトの創出を目指すカーボンニュートラルや、資源を効率的に循環させるサーキュラーエコノミーの実現を目標に据え、持続可能な社会に向けた取り組みを進めてきた。
今回の「環境配慮型ユリア樹脂」開発はその一環となるものだが、それを実現できたのは、大気中に排出されるCO₂を原料として、メタノールを製造する技術を持つ三菱ガス化学とのパートナーシップがあってこそだった。
メタノールは主として天然ガスなどから作られるアルコールの一種だが、三菱ガス化学はこれまでに、CO₂と水素からのメタノール合成や、下水処理場の未利用消化ガス(約40%をCO₂が占める)を原料としたバイオメタノールの製造に成功している。
2022年には、CO₂や廃棄物からメタノールを介して素材やエネルギーを生み出す環境循環型プラットフォーム「Carbopath(カーボパス)」を発表。世界各地で天然資源からメタノールを製造してきた技術や経験を活かし、資源の再生循環を基盤とした、化石資源に頼らない循環型社会の実現を目指してきた。
こうした「CO₂から作る」メタノールへの期待は、電材業界でもますます膨らんでいくだろう。
環境配慮型ユリア樹脂を使用した配線器具を導入すれば、住宅やビルなどの設備の資源循環への貢献となるほか、建築物のライフサイクル全体で排出されるCO₂(エンボディードカーボン)の削減にもつながる。
とはいえ、現在はまだ、従来のユリア樹脂を使った製品に比べ、コストの上昇が避けられない。製造時の設備投資は不要であり、製品の品質も劣らないだけに、あとは環境負荷の低い製品の価値への理解を、いかにユーザーに広げていくかが課題だ。
パナソニックEW社ではまず、環境配慮型ユリア樹脂を使った配線器具を商品化し、ゼネコンやハウスメーカーなどに向けた訴求を行っていく計画だ。将来的には展開商材を順次拡大していきたいという。
たかが配線器具、されど配線器具。コンセントのない国など存在しないだけに、ゆくゆくはグローバルな普及も期待したい。
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