最新記事
SDGsパートナー

「CO₂から作る」樹脂で配線器具をサステナブルに...パナソニック「炭素資源循環」の挑戦

2025年12月22日(月)12時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
熱硬化性樹脂であるユリア樹脂

熱硬化性樹脂であるユリア樹脂。例えば、コンセントの周縁部は熱可塑性樹脂で熱に溶かして再利用ができるが、真ん中の差し込み口部分には電気火災への安全性が高いこのユリア樹脂が使用される 写真提供:パナソニックEW社

<コンセントなど配線器具に不可欠な材料であるユリア樹脂。これまで「リサイクル不可能」だったが、三菱ガス化学との共同開発により、その技術的な障壁を突破する>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

持続可能な社会に向けて、資源を効率的に循環させるサーキュラーエコノミーの実現を目指した取り組みが各地で進んでいる。CO₂排出量を削減し、排出量と吸収・削減量を均衡させるカーボンニュートラルに対する時代の要請も大きい。

だが現実には、技術的な理由から資源循環が難しいケースも少なくない。その1つが、コンセントや電源タップなど配線器具に多く使われる「ユリア樹脂」という材料だった。

ユリア樹脂はショートや火災の要因となるトラッキングに強く、電気火災に対する安全性が高い。だが、一度割れてしまうと元に戻らない熱硬化性と呼ばれる性質があるため、溶かして再成形できるPET素材(ポリエチレンテレフタレート)のようにリサイクルはできない。

たかが配線器具、とは言えないだろう。例えば、コンセントなどの総称である配線用差込接続器(一般用)は、日本国内だけで月に1300万個以上が製造されているのだ(日本配線システム工業会による2025年10月統計)。これだけの数の配線器具が、使用後はユリア樹脂部分が廃棄・焼却処分されている。

そこで、コンセントやスイッチなど電気設備資材で国内シェア8割を持つパナソニック株式会社エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)は、配線器具の資源循環を実現する技術開発を行った。

メタノールの総合メーカーである三菱ガス化学株式会社と共同開発し、2025年春に発表した「環境配慮型ユリア樹脂」である。

真ん中の差し込み口(白い部分)に使われているのがユリア樹脂

真ん中の差し込み口(白い部分)に使われているのがユリア樹脂 写真提供:パナソニックEW社

工場の排ガスなどから回収したCO₂を活用

コンセントで言えば、差し込み口の箇所に使われているのがユリア樹脂。パナソニックEW社が使用する樹脂材料の約25%を占め、使用量が多い。にもかかわらず、例えるならビスケットのように、割れたら元に戻せない熱硬化性であるため、リサイクルが不可能だった。

ユリア樹脂は現在、天然ガス由来のメタノールから製造されている。「化石資源から製造され、使用後には廃棄焼却されるという、いわゆるリニア型の生産構造となっていました」と、パナソニックEW社技術本部先端技術イノベーションセンターの川角優奈主任技師は説明する。

「対して、環境配慮型ユリア樹脂も使用後は焼却されますが、工場の排ガスなどから回収したCO₂を炭素資源として活用することで、実質的な資源循環が可能になりました」

すなわち、リサイクルが不可能な材料だからといって環境負荷の低減をあきらめるのではなく、原料のメタノールに着目することで、カーボンリサイクル(炭素資源循環)を実現したわけだ。環境配慮型ユリア樹脂では、従来のユリア樹脂に比べ、原材料ベースで約20〜30%のCO₂排出量削減が見込めるという。

また、成形プロセスなどには従来の設備をそのまま使用することができ、すでに従来品と変わらない品質のユリア樹脂の製造にも成功していると、川角氏は言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

与党「地滑り的勝利」で高市トレード再開へ、日経6万

ワールド

高市首相、消費減税「やった方がいいと確信」 改憲は

ワールド

自民単独300議席超、「絶対安定多数」上回る 維新

ビジネス

自民大勝でも「放漫財政にならない」=片山財務相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 6
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 7
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 8
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中