海運の要・パナマ運河を気候変動が直撃、16億ドル巨大ダム計画が「危うい」深刻な事情

2024年12月8日(日)17時34分

<見直しか決行か>

住民グループの弁護士・活動家ら3人は、リオ・インディオ川のダム建設計画は、パナマ市西部のカピラなどの地域における森林伐採や生物多様性の喪失を伴うため、「環境への影響が大きい」と指摘する。

住民移転を中心とした地域対策費に4億ドルを投じるダム建設プロジェクトは、住民の分断を招いている。土地を売って移転しようという住民もいれば、プロジェクトに抵抗したいという住民もいる。

「カントリーメン・コーディネーター・フォー・ライフ」でリオ・インディオ川流域コミュニティーを担当するディルビノ・アグラヘ氏は、「スラムで生活したいと考える農家はいない」と語る。同団体は、移転計画をもっと詳しく説明するよう要求している。

トレスエルマナスの米作農家パウリノ・アラバルカさん(60)は、馬に乗って街中を移動しつつ、「私たちはここで生まれ育った。ここを離れるとしても、それは私たちの希望ではなく、そうせざるをえないからだ」と語る。

エスピノ副長官によれば、これとは別にバヤノ川に設けた既存のダムの水を運河に導く計画もあり、その方が竣工も早く住民移転も必要なかったが、何年も前に運河庁による分析を経た結果、立地と高コストゆえに却下されたという。

コロラド州立大学で水生生態学を専門とするルロイ・ポフ教授は、環境へのダメージという観点から見ると、リオ・インディオ川ダムプロジェクトの方が悪影響は大きく、代替案では得られないポジティブな効果はほとんどないと述べ、住民の立ち退きや生計手段の喪失、下流地域の漁業・林業が受ける打撃を指摘する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国10月物価統計、PPIは下落幅縮小 CPIプラ

ワールド

フィリピン、大型台風26号接近で10万人避難 30

ワールド

再送-米連邦航空局、MD-11の運航禁止 UPS機

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中