海運の要・パナマ運河を気候変動が直撃、16億ドル巨大ダム計画が「危うい」深刻な事情

2024年12月8日(日)17時34分

「気候変動が進む中で、健全な河川を維持することは非常に重要だ。環境の変化に対応する潜在力という点では河川が一番大きいのだから」とポフ教授は言う。

トレスエルマナスをはじめとする多くのコミュニティーでは、バヤノ川代替案が支持を集めつつある。アラバルカさんはこの代替案に触れ、「運河庁には、私たちを煩わせない手段もある」と話す。

だが、バヤノ川プロジェクトを検討した弁護士らによれば、同案を採用すればまた別の難題が生じてくるという。パナマ政府と米AESとの合弁によりバヤノ川の水力発電所を保有・運用する電力会社AESパナマとの交渉が必要になるからだ。

AESパナマはロイター宛てのメールの中で、「現在は株式の売却に向けたプロセスは何も進めていない」としつつ、「とはいえ、この問題の内容とパナマにとっての重要性は十分に理解しており、公正な合意の評価・実現に向けて、最大限積極的にパナマ政府と協議していく」と述べている。

イカサ運河担当相は、リオ・インディオ川ダムプロジェクトは運河の存続に不可欠であり、「最も実現可能性の高い選択肢」だと述べている。

エスピノ副長官は、長期的にはどちらのプロジェクトも必要になると考えている、と話す。

「気候変動によって、これまで存在した天然の水路は使えなくなってしまった」と同副長官は語る。

エルニーニョ現象は3年ごとに発生するように周期が短くなっており、パナマの乾期は長くなり、世界で5番目に降水量の多いパナマでも水源のかなりの部分が枯渇している。

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