注目のキーワード
トランプ
投資
文字サイズ

最新記事

アカデミー賞

アカデミー賞の醜い中傷合戦

A History of Oscar Smear Campaigns

アカデミー賞有力候補の『ハート・ロッカー』にまつわるスキャンダルが相次いでいるが、毎年のように繰り返される光景はもはやオスカーシーズンの風物詩だ

2010年3月5日(金)17時42分
ラミン・セトゥデ(エンターテインメント担当)

印刷

 世界で最も汚いゲームは政治だが、ハリウッドの中傷合戦は僅差で2位に入るはずだ。3月7日の授賞式を控えてアカデミー賞の選考が大詰めを迎えるなか、作品賞の最有力候補『ハート・ロッカー』が受けた打撃は少なくない。

 まず、作品の共同プロデューサー、ニコラス・シャルティエがアカデミー賞を選考する映画芸術科学アカデミー会員の友人にメールを送り、『ハート・ロッカー』への投票を促していたことが発覚。同じメールで、「制作費5億ドルの超大作」の『アバター』を最下位に投票するよう要請していたことも分かった。映画芸術科学アカデミーはこの行為をルール違反とし、シャルティエにアカデミー賞授賞式への出席を禁止した(作品の受賞そのものは禁止してはいない)。

 一方、本作が描く米軍の爆弾処理班の実態については、本誌サイトを含む多くのブログが正確性を疑問視していた。だが先日、突如として「内容が正確過ぎる」という問題が浮上した。ある陸軍軍曹が、マーク・ボールの脚本は自分の実体験を基にして書かれたものだとして関係者らを訴えたからだ。

 中傷合戦はいい加減にやめにして、穏やかに授賞式を迎えてはくれないものだろうか。映画ブログ「アワーズ・デイリー」のサーシャ・ストーンは、こうしたネガティブキャンペーンは残念ながら現代のオスカーシーズンの象徴になったと指摘する。

 映画会社はこのところ、授賞を目指して周到なキャンペーンを行うようになっている。アカデミー賞関連のブロガーも増え、彼らは常に新しいスキャンダルを求める(時に生み出す)ようになった。たとえ他の作品を引き離す優れた作品に打撃を与えることになったとしても、だ。

 オスカーをめぐる醜くて馬鹿らしい中傷合戦は、今後さらに悪化していくだろう。以下に、近年のオスカーをめぐるスキャンダルの歴史をまとめてみた。
 
2009年 受賞レースは『スラムドッグ・ミリオネア』の独走状態。すると案の定、映画に登場する2人の8歳の子役に正当な出演料が支払われなかったとか、撮影現場で不当に扱われたという話が出てきた。彼らに支払われた額は、アフガニスタンを舞台にした『君のためなら千回でも』(07年)に出演した子供たちよりも少ないとの報道もあった。

2005年 『ミリオンダラー・ベイビー』が複数の部門にノミネートされると、ニューヨーク・タイムズ紙が映画の結末は脊髄損傷の患者に「間違ったメッセージ」を与えると「社会運動家」が懸念しているとする記事を掲載した。

2004年 映画会社ドリームワークスが『砂と霧の家』を後押しする不快な広告を展開した。助演女優賞は『コールドマウンテン』のレニー・ゼルウィガーではなく、『砂と霧の家』のショーレ・アグダシュルーが取るべきだと書いた批評家の記事を集めて掲載。『ハート・ロッカー』のメールと同じくルール違反とされたが、ドリームワークスは即座に謝罪。授賞式への出席を禁止される事態は免れた(結局、ゼルウィガーが受賞)。

2003年 映画芸術科学アカデミーのロバート・ワイズ元会長が、『ギャング・オブ・ニューヨーク』のマーティン・スコセッシ監督はオスカーに値するとの論説を新聞に発表。ミラマックスのハービー・ワインスタイン会長がこの論説を広告に利用した。一部のアカデミー会員は憤慨したが、結果は意外な方向に。実はワイズは自分で論説を書いておらず、映画の広報担当が書いていたことが判明。スコセッシは受賞を逃した。

今、あなたにオススメ

最新ニュース

ワールド

ペルー大統領、フジモリ氏に恩赦 健康悪化理由に

2017.12.25

ビジネス

前場の日経平均は小反落、クリスマス休暇で動意薄

2017.12.25

ビジネス

正午のドルは113円前半、参加者少なく動意に乏しい

2017.12.25

ビジネス

中国、来年のM2伸び率目標を過去最低水準に設定へ=現地紙

2017.12.25

新着

ここまで来た AI医療

癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由

2018.11.14
中東

それでも「アラブの春」は終わっていない

2018.11.14
日中関係

安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録

2018.11.14
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2025.5. 6号(4/30発売)

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

2025.5. 6号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

Introduction AI時代に国際ニュースを英語で読む
【AMERICAS】
アメリカ 絶好調のトランプとアメリカ国民の蜜月が続くヤバさ
中南米 米中ロが攻防を繰り広げる世界の大国の「チェス盤」
【EUROPE】
ロシア 100年の恨み噴き出す戦争に終わりは見えず
ウクライナ 反骨の男ゼレンスキーをトランプ禍が悩ます
イギリス 欧州のリーダーとしていま浮上する不思議
ドイツ 財政均衡の呪縛を脱し政治経済立て直しへ
ヨーロッパ 不安の時代に流動化する欧州大陸
【ASIA】
中国 老いゆく経済大国にくすぶる火種
日本 トランプ時代に試される石破の「脱安倍」外交
韓国 ダイナミックで不安定 現状変更が好きな国
北朝鮮 貧困と孤立から脱皮へ 知られざる大変化
インド 世界一の人口大国に経済覇権の夢あり
【MIDDLE EAST & AFRICA】
イスラエル/パレスチナ 終わりなき混沌の歴史をひもとく
サウジアラビア 米中ロとわたり合う全方位外交の狙い
イラン 国内締め付けと核開発 ハメネイに迫る決断の時
中東・アフリカ 今も終わらないイスラム国の脅威
デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

MAGAZINE

特集:静かな戦争

2017-12・26号(12/19発売)

電磁パルス攻撃、音響兵器、細菌感染モスキート......。日常生活に入り込み壊滅的ダメージを与える見えない新兵器

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版

ニューストピックス

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース