最新記事
日本食

世界が注目する地方の和食文化──食団連が語る外食産業の持続可能な未来

2025年3月31日(月)11時00分
写真:林 直幸 文:室井康裕

世界に届ける「和食」の本質...地域の食文化とともに「次世代」へ

──他に課題はありますか。

山下 正直、課題だらけです。我が国では今後も人口減少していくわけです。飲食業の喫緊の課題としては人手不足。要は働き手がいないんです。大前提として社会構造的な問題がある。あとは円安です。私はよく海外にも足を運ぶのですが、円の価値がこれだけ下がると「日本は貧しい国になったのだな」とつくづく感じてしまいます。

newsweekjp20250321100312-341214659d91dec833944d43843721c667b7049d.jpg

話題となっているラーメンの「1000円の壁」問題を例にとっても、原材料費の高騰に加え、エネルギー費も上昇、物流コストは言うまでもなく、価格を上げざるを得ない状況です。

家中 食団連としてもこうした課題解決のための部会を7つ立ち上げて、理事たちが日夜議論を重ねています。特に働き手の確保。質の部分と量の部分を同時に確保しないと日本の食文化が損なわれてしまう危険があるので、そこは重点的に活動を行っているところです。

newsweekjp20250327030534-900094f8d55810c1fb796bbf010452ae2ebf4135.jpg

一方でコロナ禍を経て、飲食店のIT化が加速したのはプラスだと感じています。配膳ロボットの普及やモバイルオーダーなど、人材不足にひと役買ってくれているのではないでしょうか。

──世界無形文化遺産に和食が登録されて10年経ちます。今後、日本の食文化をさらに発展させるために必要なことは?

山下 皆さん、「出汁」が無形文化遺産になったと思っているんですね。そうではなく、「どうしてその料理をその季節に食べるのか」という歴史的背景や、食事をする時のルールなども併せ、日本の食文化自体が登録されたわけです。今後は、四季を楽しんだり、郷土料理やその地域の食文化を楽しんだりしていただけるようなフェーズに進めるべきだと考えています。そこに日が当たることによって、第一次産業も活性化しますし、その地域ならではのレシピの消失を防ぐこともできるのではないでしょうか。

家中 食にどう付加価値を付けるかが重要になってくると思います。生産された食材はもちろん素晴らしいのですが、そこにさらに価値を付けるのは料理人や飲食店の役割だと感じています。これまでも飲食業界は時代時代で柔軟に対応し続けてきました。今後も、自分たちがストーリーテラーであり、日本の食文化にさらなる付加価値を付ける担い手であるという自負を持っていただき、頑張っていただければと。食団連はそれをしっかりとサポートしていく所存です。現在、文化庁では料理人などの顕彰制度設立を模索しています。食団連としても、食を憧れの業界にするためにもぜひ実現できればと尽力しているところです。

山下 日本の地域地域で脈々と続いてきた食文化をできるだけ残したいですね。若者がその食文化に憧れて、次の世代に継承していく。インバウンドが訪れたり、ハレの日に利用されたりするような高級店もあれば、普段使いの大衆的な店もある。そうした多様性こそが日本の食文化のさらなる発展の原動力ではないかと思います。

newsweekjp20250327030601-23ed8c561d8f6e9ddd2d49355cd4aa52e6eded12.jpg

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月7号(3月31日発売)は「日本企業に迫る サステナビリティ新基準」特集。国際基準の情報開示や多様な認証制度――本当の「持続可能性」が問われる時代へ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

商船三井の船舶がホルムズ海峡を通過、日本関連で初め

ワールド

フランスのコンテナ船がホルムズ海峡通過、所有者変更

ワールド

政府内に省エネ呼びかけ案、エコ運転など「ナッジ手法

ワールド

世界食料価格、中東紛争で上昇 肥料コスト高も影響
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 9
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中