最新記事
株価

「ボラティリティー取引」世界株安で大規模損失

2024年8月8日(木)13時25分
New York Stock Exchange (NYSE)

A trader works on the floor at the New York Stock Exchange (NYSE) in New York City, U.S., May 17, 2024. REUTERS/Brendan McDermid/File Photo

株価の安定継続に賭けた個人投資家やヘッジファンド、年金基金は足元の世界的な株安で高い代償を支払い、人気の取引に資金を注ぎ込むことのリスクが浮き彫りになっている。

投資家の不安心理を反映し、S&P総合500種オプションに基づく株式市場の予想変動率を示すボラティリティー・インデックス(VIX)は5日、上昇幅が1日として過去最高を記録し、引け値は2020年10月以来の水準に跳ね上がった。


 

背景には米景気後退懸念と、3週間で世界の株式の時価総額6兆円を消失させたほどの急激なポジション巻き戻しがあった。

こうした中でロイターの計算やLSEGとモーニングスターのデータを踏まえると、ボラティリティーを売るタイプの上場投資信託(ETF)の規模別上位10本で運用していた投資家は、リターンが今年の最高水準から41億ドルも目減りしている。

これらのETFは、VIXが低位安定していれば収益が得られる仕組み。個人投資家だけでなく、ヘッジファンドや年金基金などからも大量の資金が流入した。

投資総額を特定するのは難しいが、JPモルガンが3月に試算したところでは、ボラティリティー売りのETFで運用されている資産額は約1000億ドルに上る。

2018年にボラティリティー売り取引がいかに失敗したかについての著書があるラリー・マクドナルド氏は「5日のVIXの変動幅さえ見れば、ボラティリティー売り戦略で巨額の資金が失われたことが分かる」と語った上で、公表されているETFのデータ以外に、銀行を通じた相対取引をしているヘッジファンドや年金基金の分を含めると損失規模はもっと大きくなると付け加えた。

5日に65ポイントを超えたVIXは7日、約23ポイントまで落ち着いたとはいえ、まだ数週間前の水準を上回っている。

超短期オプションの台頭

こうした投資戦略の人気を近年高める原動力の一つになったのは、いわゆる「ゼロデイ・オプション」と呼ばれる、取引された日に期限を迎える間にプレミアムを稼ぐ超短期オプションの取引拡大だった。

ヘッジファンドや個人投資家などは22年以降、1日単位でのオプション契約が可能となり、VIXが低水準にとどまっている際にボラティリティーを売って収益を得る機会が増大。23年からはETFにもこの取引が採用されるようになった。

超短期オプションの多くは、コール売り建て(カバードコール)を駆使しつつ、米大型株などの証券に投資する取引に基づいている。これらは、ボラティリティーが落ち着いている限り、株価上昇によってプレミアムを獲得できるもので、年初から7月1日までS&P総合500種が15%強上昇した一方、VIXは7%低下していたので、うまく機能していたように見えた。

2人の関係者はロイターに、一部のヘッジファンドはもっと複雑な取引を通じてボラティリティー売りポジションを構築していたと明かした。

バークレイズによると、ヘッジファンドに人気があったのは、5月に過去最高値に迫っていた幾つかの個別株と、S&P総合500種の低いボラティリティーの裁定に絡む取引だったという。

ヘッジファンド調査会社ピボタルパスが、ボラティリティー取引を手がける25本のファンド(合計運用資産約215億ドル)の5日のリターンを分析したところでは、ボラティリティー売り専門はマイナス10%、ボラティリティーの売りと買いを組み合わせた戦略を採用するファンドを含めたグループ全体はプラス5.5―6.5%だった。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 教養としてのミュージカル入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月17号(3月10日発売)は「教養としてのミュージカル入門」特集。社会と時代を鮮烈に描き出すポリティカルな作品の魅力[PLUS]山崎育三郎ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡付近で3隻に飛翔体、タイ船の火災で3人

ビジネス

IEA、最大規模の石油備蓄放出勧告へ 計4億バレル

ワールド

イラン、米・イスラエル関連の域内経済・銀行拠点をを

ワールド

市場変動が経済への衝撃増幅も、さまざまなシナリオ検
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 7
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 8
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 9
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 10
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中