最新記事

コロナ禍

東南アジア経済が窮地、デルタ株拡大で生産打撃

2021年8月8日(日)10時05分
マレーシアのゴム手袋工場

東南アジアの製造業セクターは、強い感染力を持つ新型コロナウイルスのデルタ株の広がりで身動きが取れず、半導体やゴム手袋といった製品の世界的な供給に混乱を引き起こし、この地域の景気回復を脅かしている。マレーシアのゴム手袋工場で2020年8月撮影(2021年 ロイター/Lim Huey Teng)

東南アジアの製造業セクターは、強い感染力を持つ新型コロナウイルスのデルタ株の広がりで身動きが取れず、半導体やゴム手袋といった製品の世界的な供給に混乱を引き起こし、この地域の景気回復を脅かしている。

今週発表された製造業を対象とする一連の調査では、東南アジアで7月の企業活動が急速に落ち込んだことが分かった。北東アジアや西欧の製造業が減速しながら、なお拡大基調を維持したのとは対照的だ。

デルタ株による東南アジア経済の動揺を増幅しているのは、地域人口6億人に対するワクチン接種の遅れだ。各国政府はワクチンの確保に苦戦し、経済コストの大きいロックダウンを実施しており、多くの工場からは労働者がいなくなった。

東南アジアは幅広く堅実な経済改革の実施や、中国に近いという地の利の恩恵で、世界でも屈指の「打たれ強い」新興地域となり、ここ数十年で起きたさまざまな危機を乗り切ってきた。だが、今回の逆風は、経済成長に新たな脅威をもたらしている。

HSBCのエコノミストチームは、インドネシアとベトナム、フィリピン、タイのワクチン接種率が低いばかりか、使用しているワクチンの効果に疑念があると解説。「つまりこれらの国の人々は現在の感染拡大だけでなく、今後さらに進化するかもしれない別の変異株に対しても脆弱な状況に置かれる。規制を導入しては解除する展開が続き、当面の成長見通しに重圧を与えそうだ」と述べた。

主として労働コストの低さと原材料の入手しやすさが競争力の源泉となっている東南アジアの製造業にとって、デルタ株感染拡大が労働力の供給に影響を及ぼし、生産が大きな制約を受ける事態になっている。

アジア第4位の自動車輸出国で主要自動車ブランドの生産拠点が置かれているタイでは、トヨタ自動車が7月に入って部品不足を理由に、現地工場3カ所の操業を停止した。

需要満たせず

タイの加工果物輸出企業、サイアム・アグロ・フード・インダストリーは、外国人労働者に大きく依存しており、これらの従業員がいったん本国に帰った後、国境閉鎖で戻れなくなったため、550人が必要な仕事に400人しか人員を手当てできていない。

同社社長は「毎日350トンの果物が入荷するのに、今処理できるのは250トンにとどまる。なぜなら加工に携わる人手が足りないからだ。当社の一番の出荷先である米国など、輸出市場は強い需要が存在する。問題は生産側にある」と説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中