最新記事

コロナ禍

東南アジア経済が窮地、デルタ株拡大で生産打撃

2021年8月8日(日)10時05分

サムスン、フォックスコン、ナイキといった世界的な企業の工場があるベトナムの場合も、南部で操業している企業は、規制措置によって夜間は従業員を工場に立ち入らせることができなくなっている。

ベトナム統計総局が先週公表したデータに基づくと、南部の幾つかの都市や省は、7月から導入した厳しい移動制限が原因で工業生産が急低下した。

世界のゴム手袋の約67%を供給しているマレーシアでは、ロックダウンのため、多くのメーカーが6月と7月に操業を停止。その後、業界団体の訴えを受けて規制が緩和され、6割の従業員が復帰した。業界側は、全従業員が稼働できるようにしてほしいと要望しているところだ。

東南アジアの混乱は世界に波及

東南アジア製造業の混乱は、既に他の地域にも影響を与えている。例えば、ドイツの半導体メーカー、インフィニオン・テクノロジーズは、マレーシア工場の一時閉鎖で数千万ドルの損失が発生すると予想。そうした工場閉鎖が今度は、インフィニオンの取引先の自動車セクターに波及するだろう。

マレーシア・ドイツ商工会議所のバーンベック最高責任者は、マレーシアの厳格な隔離ルールが、半導体メーカーなど高付加価値製造業にとって、必要な技術専門家の確保も難しくしていると指摘した。

アナリストは、リスクは生産への打撃にとどまらないと警鐘を鳴らす。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは「集中的な経済構造」と政府機構の弱さがあるアジア太平洋経済は、最も痛手が大きくなると予想。「これらは低所得層を伴っており、そこが深い傷を負えば社会的なリスクが増大する公算が大きい。一部では、多大な債務負担がパンデミックに耐えるための政府の財政出動余地を限定してしまっている」と分析した。

(Orathai Sriring記者 Liz Lee記者)

(Orathai Sriring記者 Liz Lee記者)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中