最新記事

アメリカ社会

サブプライム自動車ローン急増の背景にある格差

焦げ付く心配なしとみて、ウォール街が信用度の低い借り手に高金利ローンを貸し付ける矛盾

2015年1月29日(木)17時41分
アンジェロ・ヤング

車依存社会 金融危機で米政府の支援を受けた自動車メーカーも復活 Rebecca Cook-Reuters

 アメリカ人は自動車ローン返済だけは怠らないよう、厳しい家計をやり繰りしている──個人向け融資のデフォルト(債務不履行)率に関する最新のデータで、そんな実態が明らかになった。調査会社エクスペリアンが発表した昨年12月のデータをみると、クレジットカードのローンと住宅ローンのデフォルト率は5カ月連続で上昇しているのに、自動車ローンのデフォルト率だけが低下している。

 このデータから家計の優先順位がうかがえる。他のローンの支払いが滞っても、車だけは手放せないと、多くのアメリカ人は考えているようだ。とりわけ、物価の高い都市から郊外に追いやられた低所得層は、車なしでは生活が成り立たない。

 信用度が低い借り手も自動車ローンの支払いだけは踏み倒さない――そんな読みもあって、サブプライム(信用度の低い人向け)の自動車ローン残高は急速に増えている。

「過去60年間、(公共交通機関ではなく)道路ばかりを重点的に整備する政策がとられてきたため、アメリカは車に大きく依存する社会になった。郊外から都市に通勤するには車が不可欠だ」と、バージニア工科大学の准教授ラルフ・ビューラー(都市計画)は言う。「裕福な人々が都心部に住み、低所得層は郊外に押し出される現象も進んでいる」

 その結果、裕福な人が住む都市では公共交通へのアクセスが改善されているのに、「低所得層が増加している郊外では、労働者が車を持たなければならない矛盾が問題になりつつある」と、ブルッキングズ研究所は11年の報告書で警告している。

 都市に住むのは専門性の高い高収入の仕事に就いている人たち。彼ら富裕層は車なしでも生活できるのに、郊外に追いやられた低所得層は車がなければ職にもありつけないのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中