最新記事

日本

東京が「世界一」の座を奪還

外国人駐在員にとって最も高価な都市の「栄冠」を獲得した東京の不幸

2012年6月13日(水)15時19分
エレーヌ・ホフマン

世界一 何でも高ければいいというものではない istockphoto

 世界の強豪を押さえ、東京が再び世界一の座を奪還した......外国人駐在員にとって「世界一物価の高い都市」の座を。

 アメリカの人事コンサルティンング会社マーサーが毎年発表している調査で、昨年1位だったアンゴラの首都ルアンダ(内戦終結で物価が高騰していた)を抜き返して東京が1位になった。

 この調査は、交通費や食費、衣料品や日用品、娯楽費など200以上の項目について世界の都市を比較する。

 調査結果によると3位は大阪、4位はロシアの首都モスクワ、5位はスイスのジュネーブだった。調査が行われた214都市の中で最も物価が安かったのはパキスタンのカラチで、その生活費は東京の約3分の1。

 この調査は、多国籍企業が海外派遣している駐在員に支払う報酬や手当てを決定する際の参考のために実施されている。調査ではニューヨークの物価を基準として各都市を比較する。

 今年の調査では、アメリカの数都市の物価が「驚くほど安い」ことも判明した。全米の主要都市の中でもっとも物価が安かったのはノースカロライナ州のウィンストン・セーラム。シカゴは世界214都市中110位、首都ワシントンは107位だった。

 一方、イギリスの各都市も、通貨ポンドの下落を反映して近年は順位を下げている。ロンドンは昨年の18位から25位に下落。パリやローマ、アムステルダムなど、他のヨーロッパの主要都市も同じく順位を下げた。

 英BBCの分析によれば、通貨ユーロやポンドの下落で、ヨーロッパで暮らす外国人駐在員の生活費が大幅に安くなったという。逆にアジア太平洋地域の国々は、経済が相対的に強くなっているために生活費も押し上げられる結果となった。

 では東京はなぜトップに返り咲けたのか。それはもちろん、IMFさえが「いくぶん過剰評価」と同情するほどの円高のせい。国内はデフレなのに外国企業からは物価高で嫌われる。踏んだり蹴ったりの「栄冠」だ。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 150億ドル

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中