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タイヤ発、米中貿易戦争のジレンマ

2009年11月18日(水)14時48分
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト)

いずれは石油、資源、食糧も支配?

 今この重商主義的政策によって、世界各地に失業が輸出される恐れが広がっている(大きな打撃を受ける可能性があるのは他の途上国だ)。そして、中国は石油や鉱物、食糧などの原材料や外国企業の買収競争を支配できるだけの現金をも手にしかねない。中国の外貨準備高は現在、2兆1000億ドルに上っている。

 中国政府自身もその弊害を認識し始めている。世界的な景気後退は国外市場を縮小させ、輸出は激減した。これに対して中国は、国内経済を刺激するという正しい対応を取った。

 エコノミストのラーディーは、借金の少ない中国で急速な経済成長が続くのはいいことだと考えている。中国では、家計の借金の対GDP(国内総生産)比が約20%にすぎない(アメリカは100%)。社会保障費の支出も急激に増えている。だが中国は、国内経済の拡大と同時に暴利をむさぼる貿易慣行もやめなければならない。

 オバマが決めたタイヤ関税の評価は複雑だ。保護主義的で悪い政策だが、一方で中国に正しいメッセージを送っている。君たちの利己的な貿易が世界経済を脅かしている、今すぐやめるべきだと。

[2009年9月30日号掲載]

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